【産業天気図・空運業】原油高騰一服と客足好調で薄日が差す。ただ個別企業には温度差も

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空運業は「曇り」模様に薄日が差してきた感がある。懸念されている原油高騰が一服しているほか、国内・海外の旅行客数も順調に伸びている。航空各社の輸送実績によると、お盆の国内線旅客は約322万人で前年比約3%増。国際線も約60万人で同1.3%増えた。特に中国は反日デモの影響が払拭されて急回復、その他のアジア路線も好調だ。
 このように需要は順調だが、それをどれだけ取り込めるかは各社それぞれで、明暗が分かれている。日本航空<9205.東証>は、第1四半期(4~6月)の売り上げが5222億円と前年同期比188億円回復だが、営業損益は319億円の赤字で昨年並み。安全問題で国内線の顧客流出の回復が鈍いほか、国際線で燃油費高騰が響いた。通期でも営業利益170億円との黒字浮上目標は未達の公算が大きい。
 これに対して全日本空輸<9202.東証>は第1四半期の売り上げが3452億円で前年同期を328億円上回った。営業利益も前年同期比77億円増の195億円で、売上高、利益とも過去最高の水準。国内線で個人旅客中心に流入が進み、事前割引の「旅割」も好評。国際線も中国線の回復が大きく貢献した。中間期は会社計画の上振れが必至の情勢。通期でも会社予想営業利益760億円は過小だろう。
 スカイマークエアラインズ<9204.東証マザーズ>は苦戦を強いられている。第1四半期の売り上げは68億円で前年同期比11億円減。営業損益は34億円の赤字で前年同期より24億円悪化した。主力の福岡線の価格が4月から大手2社と500~1000円ほどしか変わらない水準になり、顧客が流出した。新規参入の札幌線も4~6月の搭乗率は50%前後と低迷。今後は、2つだった事前割引を7つまで細分化し、直前には5000円ほど差がつく水準まで値段を下げるなどの工夫で挽回を狙う。
【山本亜由子記者】


(株)東洋経済新報社 会社四季報速報プラス編集部

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