「勝算の低い戦争」に日本が突き進んだ背景事情 行動経済学で紐解く、日本軍部の心理

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もしそうなればアメリカは、日本と戦うメリットが少なくなるため、戦争をやめて日本に有利な形で和解の道を選択することも考えられたわけです。

①では確実に損失が発生します。

②では極めて少ない確率ですが、開戦したほうがよい結果が得られるかもしれません。

プロスペクト理論では、開戦する場合の(高い確率での)損失よりも(極めて低い確率での)利得のほうをより大きく評価します。

かなりリスキーな選択ですが、そのリスクある選択が冒険的な気分へと昇華していき、日本は開戦へと突き進んでいったということが説明できるのです。

勝つ可能性を過大評価する心理的な圧力

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冷静な確率論で考えるのではなく、勝つ可能性を過大評価する心理的な圧力が働いたと考えれば、日本の参戦理由を理解しやすいかもしれません。

世界各地では現在も戦争や紛争が発生していますが、戦争と経済がどれほど深い関係にあることか、さらに我々がいかに不確実な考えに基づいた行動をするのか理解できたのではないでしょうか。

イデオロギーや感情論ではなく、経済との関係から戦争を見つめ直す。そうすることで、私たちは世の中の空気に流されない冷静な見方ができるはずです。

井堀 利宏 東京大学名誉教授

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いほり としひろ

東京大学名誉教授、政策研究大学院大学教授。東京大学大学院経済学研究科元教授。
1952年、岡山県生まれ。東京大学経済学部卒業、ジョンズ・ホプキンス大学博士号取得。東京都立大学経済学部助教授、大阪大学経済学部助教授を経て、1994年、同大学教授。1996年、同大学院経済学研究科教授。1993年、東京大学経済学部助教授。1993年~2015年の22年間、東大の経済学部及び大学院経済学研究科で教鞭をとる。2015年4月より政策研究大学院大学教授。

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