EV電池原料リチウム、中国の「供給過剰」に拍車 市場価格は1年前の7割安、さらなる値下がりも

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リチウム相場の急落は関連企業の業績を直撃している。前出の範氏によれば、(炭酸リチウムの原料である)リチア輝石やリチア雲母などの鉱石を外部から購入している加工業者の損益はすでに赤字に陥っている。

それに対し、鉱石の採掘から炭酸リチウムの生産まで一貫して手がける加工業者は相場下落への耐性が高い。範氏によれば、自社鉱山を保有する永興特殊材料科技や江西特殊電機などの損益分岐点は1トン当たり6万~7万元(約127万~149万円)だという。

リチウム相場は鉱山の採算ラインまで落ち込む可能性がある。写真は中国のリチウム大手、贛鋒鋰業が権益を持つオーストラリアの鉱山(同社ウェブサイトより)

一方、リチウム鉱山が採算を維持するための最低ラインは、中国の主力産地である江西省宜春市の鉱山やアフリカの鉱山では1トン当たり8万~8万5000元(約170万~180万円)とされている。

採掘コストがより低いオーストラリアの鉱山では、高品位のリチウム鉱石の採掘に集中することで、コスト効率をもう一段改善する余地がある。とはいえ、その幅はあまり大きくないと見られている。

需要の伸びには期待できず

「仮に炭酸リチウムの世界需要が予想を下回った場合、市場価格はオーストラリアの鉱山の採算ラインまで落ち込む可能性がある。その結果、オーストラリアの鉱山が大幅な減産に踏み切れば、それが相場の下支えになるだろう」。範氏はそう予想する。

では、需要サイドの今後の見通しはどうなっているのか。リチウムの需要量が最も大きい車載電池に関しては、EVとPHV(プラグインハイブリッド車)を中心とする「新エネルギー車」の中国市場での販売動向が1つの指標になる。

本記事は「財新」の提供記事です。この連載の一覧はこちら

2024年上半期(1~6月)の新エネルギー車の販売台数は494万4000台と、前年同期比32%増加した。ただしその内訳を見ると、EVの販売台数の伸び率が前年同期比11%にとどまった一方、PHVは同88%と大幅な伸びを記録した。その意味するところについて、範氏は次のように解説した。

「車両1台当たりの電池の搭載量は、PHVはEVよりもはるかに少ない。したがって、炭酸リチウムの需要の増加率は(EVとPHVの両方を含む)新エネルギー車の販売の伸び率を下回らざるを得ない」

(財新記者:蘆羽桐)
※原文の配信は7月31日

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