中国政府は、2008年に起こったリーマンショックの後、4兆元(当時の為替レートで約56兆円)の景気刺激策を打ち出しました。巨額の財政出動によって、インフラ整備とともに製鉄所などの生産設備の建設が行われたのです。
これが供給過剰を生み出してしまい、いまだに鉄鋼市況が緩んでいます。しかも、近年は中国をはじめとする新興国経済が減速していますから、インフラ投資が抑制されており、ますます鉄がだぶついているのです。もちろん、日本の鉄鋼会社は高品質の製品を作っていますが、世界的な鉄鋼のだぶつきはやはり経営に影響を与えています。
中国経済の先行きに感じる不安感
今回分析した2社を含む中国関連企業の先行きはどうなっていくのでしょうか。マクロの動きから考えてみましょう。
中国経済は、短期的にも中長期的にも、減速要因がいくつか重なっています。ひとつめは、米国の利上げが今年中に始まるのではないかとの憶測が広がっていることです。これを見込んで、新興国への投資資金が引き下げられています。新興国への投資が減ってしまえば、当然、その地域のインフラ投資も縮小します。中国経済に大きな影響を受けるアジアの新興国ですが、逆に、アジア新興国の経済減速の影響を中国も受けるわけです。
2つめは、中国の生産年齢人口の減少によって、中長期的に経済が後退していくということです。これは中長期的に影響を与えます。
中国は、2011年頃には10%前後の高成長を維持していましたが、2012年以降は7%台半ばまで落ち込み、減少傾向が続いています。さらに、今年の成長目標を7%前後としていますが、このままでは達成は厳しいと考えられています。
3つめは、不動産バブルの終焉です。2000年以降、中国は急速な景気拡大を続けてきましたが、その裏側では、不動産バブルが起こっていました。ところが、2014年あたりから不動産価格が下落しはじめ、不動産市況の活況が終わりを迎えつつあります。習近平が進めている腐敗撲滅運動も、投資での不正を抑え込むことから、不動産価格下落に影響を与えています。
以上の点を考えると、中国依存度の高い企業は、これまでのような発展は難しく、今後も伸びにくいと言えます。ただ、今回分析した2社については安全性が高く、特にファナックは抜群の収益力がありますから、今のところ問題はありません。今後、どのように販路を拡大していくのか注目です。
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