ファナックと神戸製鋼を分析する 中国経済の減速で、日本企業はどうなるか

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次に、神戸製鋼所の平成28年3月期第1四半期の決算内容を分析します。損益計算書(6ページ参照)を見ると、売上高は前の期より3.4%増の4600億円。しかし、営業利益は9.7%減の252億円、四半期純利益は48.2%減の118億円となりました。

中国の投資減の影響を受けた「KOBELCO」

主な原因は、中国で建機の需要が減少したことです。中国は景気減速に伴ってインフラ投資を抑えているため、油圧ショベルなどの建機の収益が落ち込んでいるのです。

先ほど、ファナックの分析で売上高営業利益率に注目しましたが、神戸製鋼の数字も計算してみますと、5.5%とファナックと比べると低い水準になります。鉄鋼業の利益率は総じてそれほど高くはありません。(ファナックがとても高いというほうが正しいでしょう。)

一方、自己資本比率は34.0%と安心できる水準です(5ページの貸借対照表、純資産÷負債純資産で計算)。このように、収益率が比較的低く、安全性が高いというのは、鉄鋼業の大きな特徴です。鉄鋼業は、多額の設備投資を必要とする装置産業で、売上高と費用の額が釣り合う点「損益分岐点」が高い産業ですから、利益が出るまで(損益分岐点を超えるまで)は、多額の売上げが必要ですが、そこを超えれば莫大な利益が出ます。

逆を言うと、景気が悪い時は大きな赤字が出てしまいますから、中長期的な安定性を確保するために自己資本比率を高くしておかなければ、会社を維持できないのです。

決算内容に戻ります。神戸製鋼も業績予想を、下方修正していますね。2016年3月期の売上高を、従来の1兆9900億円から1兆9500億円に引き下げ、当期純利益は30.7%減の600億円を据え置きました。

この理由は、何でしょうか。先ほど、中国でのインフラ投資の減少が業績悪化の原因と説明しましたが、それだけではありません。鉄鋼業が長期的に苦戦している要因があるのです。

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