世の中というのは、やはりそのような人を放っておかない。社会には、何かそのような「発見能力」というものがある。引きが来たときには、自分でも驚くほど、自分の好きなことがやりやすくなる。
「きみ、将来必ず重役になれる方法を教えてあげようか」と、松下が言ったことがあった。
会社をほめる態度を持っている人は注目される
「入社1日目に、会社から帰ってきたとき、家族にどう報告するかや。 とてもいい会社のように思うから、ここで大いに仕事をしてみたい、と言うことができるかどうか。それが成功への第一の関門やね。そういう心がまえからすべてが生まれてくるものや」
そのように仕事を始めると、友だちに会ったときにも親戚に会ったときにも、同じように話す。その人の言動によって、家族、友人、知人の頭に、会社のいい印象が残って、それが人から人へと伝わり、会社の評判が高まる。いずれ販売を増やすことにもつながるだろう。世の中にはそういったところがある、と松下は体験的に知っていた。
ところが、不平をもらす人は多くても、そういう簡単なことをやらない人が案外多い。だとすれば、会社をほめるという態度、心がまえで終始している人は、必ずどこの会社にあっても注目される。会社はそのような人を切実に求めているからである。その人を部長、重役にせずして、いったい誰をするのであろうか。その人は、求めずして、重役の地位についていくことになるだろう。
歌手を志す人であれば、いかに音楽が素晴らしいものであるかを語ることである。作家を志す人であれば、いかに小説が楽しいものであるかを、映画監督を志す人であれば、優れた映画がいかに人を感動させるものであるかを語ることである。
さて、ここで、一言触れておきたい。それは最近の特徴として、そもそも好きなものがわからない、何をやったらいいのかわからないという人たちが増えているということである。これは豊かな社会におけるぜいたくな悩みというものであるが、本人にとっては切実な悩みであろう。
好きなものが見つからないというのは、自分のことだけや、自分の周辺のことだけを考えているからである。豊かな社会では、自分ひとりの小さな世界をつくって、その日暮らしで過ごしていける。
しかし人間というのは、他人との関係で生きている存在でもあるのだから、結局自分のことだけを考えている人には、好きなことが生まれてこない。目をもう少し高く、広くして、世の中や世界のことを考えてみることである。日本にないのなら、アメリカ、ヨーロッパ、アジアまで含めて考えてみる。
そうすると、ふと目に留まるもの、心に留まるものが出てくるのではないだろうか。夢を見つけるためには、自分を中心に考えるのではなく、社会を中心に考える、世の中を中心に考える、世界を中心に考える、場合によっては宇宙を中心に考える。その結果、夢が生まれてくるし、自分のやりたいことが生まれてくる。あるいは自分がやらなければならないと感じることが、自然に生まれてくる。
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