"かぞかぞ"河合優実「令和版あの女優」になる確信 時代への疲労感を抱えた圧倒的な存在感

✎ 1〜 ✎ 76 ✎ 77 ✎ 78 ✎ 79
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

特に問題や事件なく番組は進んだのだが(当たり前だ)、「♪キャンペーン実施中!」の似合わない若手女優が、『あさイチ』という、エグみを完全にウォッシングする装置のような番組の中に、ポツンと置かれている異物感が先に立ったのだ。

そして57歳の私は思ったのだ。「この異物感は、かなり前に、昭和の時代に受け取ったことがあるぞ、一緒のデジャヴュだぞ」と――。

「疲労感系」の俳優

この連載で、森七菜を取り上げたとき、森七菜の向こう側に斉藤由貴が見えることを指摘した。また安藤サクラと樹木希林を重ね合わせたこともある。

これらと同様に、よくよく目をこすって河合優実を見てみると、私には、あの女優が見えてくるのだ。

――桃井かおり。

それも1979年の桃井かおり。映画でいえば『もう頬づえはつかない』『男はつらいよ 翔んでる寅次郎』『神様のくれた赤ん坊』。そしてNTVドラマ『ちょっとマイウェイ』などで、強烈な異物感を振りまいて一気にスターダムにのし上がった頃の桃井かおりが、河合優実の向こう側に見えてきたのである。

異物感の源は、彼女らの発する時代への疲労感だ。2024年の河合優実にも、1979年にも桃井かおりにも「♪キャンペーン実施中!」が似合わない(似合わなかった)のは、彼女たちのほうが、視聴者側より「疲れている(た)」からだろう。

そんな「疲労感系」の俳優は、当然、不景気との親和性が高い。「失われた30年」が行き着き、株価が乱高下する2024年に河合優実、1979年前後の第2次オイルショックに桃井かおり、さらにいえば、第1次オイルショック(1973~1974年)には秋吉久美子がいた。

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事