キーエンス、なぜ最高益でも株価乱調続く ファナックショックだけじゃない、弱点とは?

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ちなみに下方修正後のファナックの今2015年度純利益予想は1595億円(2014年度実績は1912億円)。前年度の売上高実績では倍以上の格差をつけられていたファナックに対して、今年度の純利益ではキーエンスが猛追する格好となる。

業績面では株価の乱調を説明しにくいキーエンス。ファナックの下方修正に端を発した「ファナックショック」は、同じく業績予想を下方修正した東京エレクトロンや、逆に4~6月期を好決算で乗り切った村田製作所などの株価にも波及している。キーエンスの株価も、こうした電子機器・部品関連業界全体の株価乱調に巻き込まれた面がある。

「株主還元」ではファナックの後塵を拝する

キーエンスの場合、ファナックよりも投資家の評価が劣るのは、配当政策など株主還元の面だ。キーエンスは昨年10月、それまで年間60円を予定していた配当金額を2014年度から200円へ引き上げると発表。株価はそれまでの4万円台半ばから、一気に6万円近くまでハネ上がった。

ただ、1株純利益に占める配当金の割合を示す「配当性向」は、大幅増配した2014年度でも2ケタぎりぎりの10%(2013年度は4%強)。議決権行使助言会社として世界的大手のISSが「賛成を推奨」とする「配当性向15%以上」には未達だった。結果、6月の株主総会では、他の議案の賛成率がほぼ9割以上の中、配当を決める剰余金処分議案だけが賛成率67%どまり。昨年6月の総会での63%からはわずかな改善にとどまった。

7月末の決算発表では、変則決算ながら決算期末に当たっていたため、増配や株式分割などを含めた「株主還元」について、もう一段踏み込んだ発表があるのではという期待感が投資家サイドにはあったようだ。そうした株主還元策が今回はとりあえず打ち出されなかったことが、足元の株価に影響を及ぼした可能性がある。

一方、ファナックは今年3月、稲葉善治社長が積極還元方針への転換を表明。背景には、「モノ言う投資家」の米サードポイントが同社大株主に登場したことや、上場企業の統治原則をまとめたコーポレートガバナンス・コードの原案が3月初めに示されたことがある。4月27日には、8年間続けてきた配当性向30%方針を60%まで引き上げるうえ、機動的な自己株買いや、自己株消却も行うと発表。この結果、ファナックの株価は、積極還元を打ち出す前の2万円近辺から、2万円台後半まで急伸した。

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大滝 俊一 東洋経済 記者

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おおたき しゅんいち / Shunichi Otaki

ここ数年はレジャー、スポーツ、紙パルプ、食品、新興市場銘柄などを担当。長野県長野高校、慶応大学法学部卒業。1987年東洋経済新報社入社。リーマンショック時に『株価四季報』編集長、東日本大震災時に『週刊東洋経済』編集長を務め、新「東洋経済オンライン」発足時は企業記事の編集・配信に従事。2017年4月に総務局へ異動し、四半世紀ぶりに記者・編集者としての仕事から解放された

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