ダイヤ通りは6割、ドイツ鉄道「遅延」の深刻事情 「時間に正確」は印象だけ?ラテン系諸国は改善

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また、あまりに遅延が生じることから、近年では直通運転を行っていた一部の列車をバーゼル止まりに変更している。言葉は悪いが、ドイツからの旅客に関しては見捨てるという形だ。

ドイツ 駅案内板 遅延
ドイツの発車案内掲示板で遅延の表示を見ないことはない。一番左が本来の時刻、その隣が実際の運転状況だ(撮影:橋爪智之)

ドイツからスイスへ向かう乗客は旅行客のほか、ドイツに居住してスイスで働いている人も多く、両国間を結ぶ需要は高い。だが、列車の遅延とそれに伴う運転打ち切りは乗客にとって大きなマイナスとなる。

直通運転の取りやめは意地悪なようにも見えるが、スイス国内は前述の通り、90%以上の高い定時運行率を誇っており、他国の列車遅延によって自国内のダイヤが混乱することは好ましいことではない。自国民の利益を守るため、他国を切って捨てるという選択は決して間違ったことではない。

フランクフルト中央駅 スイス行き国際列車
フランクフルトで発車を待つスイス方面への国際列車(撮影:橋爪智之)

実は優秀なフランス・イタリア

「(他の外国と比較して)ドイツは時間に正確、勤勉、実直で真面目」

多くの日本人は、ドイツについてそういう印象を持っているのではないだろうか。それは大筋で間違ってはおらず、実際ドイツ人の多くは勤勉で、時間に対してもルーズではない。ただ、国を代表する公共交通機関だけは、自国内からもいい評判は聞こえてこない。「時間内に到着することは諦めている」「遅延に対して耐え忍ぶしかない」という悲観的な声ばかりだ。

遅延 ICE
25分遅延しているミュンヘン行きのICE。定刻は10時27分発だが10時52分になっている(撮影:橋爪智之)

ドイツという国に対するもともとの期待値が高い分、遅延が多発する現在のドイツ鉄道に対して批判の声や、失望・落胆する声が大きくなることはやむを得ない。

では、「最初から期待されていない国」の状況はどうか。国民性の違いから、時間にルーズという印象ばかり持たれがちなラテン系の国々、例えばフランスやイタリアなどだが、これは意外にも悪くない。

フランスは、過去数年で少し数値を落としたものの、定時運行率はおおむね80%以上を記録しており、どの列車もまずまずの定時運行が行われている。筆者が以前乗車した高速列車TGVは、終点のパリ・リヨン駅に30秒と違わず到着し、驚かされたことがある。

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