ダイヤ通りは6割、ドイツ鉄道「遅延」の深刻事情 「時間に正確」は印象だけ?ラテン系諸国は改善

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また、他国と異なり、中小規模の都市が面状に広がるドイツ特有の地理的要因も、遅延を招く要因となっていると言える。

面状に広がる鉄道システムは、ある1カ所で工事が発生すると、その影響はあっという間に他の地域へと波及していく。これに対し、例えばフランスはパリ一極集中で、パリと地方都市を結ぶ線状の運行形態が中心だ。この場合、各線の横のつながりはそれほど重要ではなく、点と点を結ぶことに集中すればいいため、遅延が生じにくい。

イタリアは日本と同様、国が細長い地形をしており、長距離列車の路線網も中心となるのは南北間で、フランスと同様に線状の運行形態が基本となっている。

定時性に優れるスイスは、九州よりも小さい国土面積に約5300kmの鉄道網が敷設されているが、鉄道の規模はドイツの6分の1しかなく、同列に語るのは少々酷なことだ。スイスもチューリヒ周辺は多くの路線網が交わり、かつては遅延の温床となっていたが、地下を通過する新しいホームや立体交差化などの工事が完了し、大幅に改善された。

ドイツの場合は、チューリヒのように改善しなければならない都市がいくつもあり、すべてに手が回りきっていないということも、遅延が改善しない理由の一つだ。

ドイツ鉄道 線路
複雑な線路はドイツ国内の遅延の温床となっている(撮影:橋爪智之)
ケルン中央 ドイツ鉄道
ケルン中央駅への進入路は遅延発生の温床だ(撮影:橋爪智之)

増え続ける需要、遅延対策どうなる?

こうした状況であるにもかかわらず、列車本数は旅客、貨物とも増加傾向にあり、今後も増えることが予想されている。ドイツの鉄道は2021年に延べ約14億人を輸送したが、2030年には約28億人に倍増すると試算されている。インフラを大きく改善しない限り、遅延を解消することは不可能といえよう。

ヨーロッパ屈指の巨大な鉄道路線網が大きく変貌を遂げ、定時運行率が上昇し、乗客の利便性が改善されるまでには、まだ年単位の時間を必要とし、利用客はただ辛抱強くその時を待つほかないだろう。

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橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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