仮設住宅の住環境格差、寒さ対策を怠った宮城県、実施ゼロ%が並ぶ理由

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 看護師らのボランティア団体「キャンナス東北」で石巻エリアリーダーを務める佐々木あかね看護師によれば、「8月27日以降に訪問した石巻市内の仮設住宅12カ所のうち8~9割で、仮設住宅の敷地内に設けられた集会所がまったく活用されていなかった」という。

「集会所の鍵は市役所が管理している場合が多く、ほとんどの集会所の談話室には机も白板も置かれていなかった。結果として、住民同士が顔を合わせる機会もなかった」(佐々木看護師)。

こうした実態は、行政の機能低下によるところが大きい。津波の被害が大きかった石巻市では、市の職員の多くも被災。震災前からの行政改革で職員数も大きく減っており、住民への対応が困難になっている。市の担当者は「苦情処理に追われ、現地訪問もままならない」と打ち明ける。県による手助けも不十分だ。

石巻市では仮設住宅への入居を抽選に委ねたため、被災住民が市内各地の住宅にばらばらに入居。コミュニティ形成を阻んでいる。岩手県の宮古市が抽選を行わずにすべての被災住民を地区単位で近隣の仮設住宅に入居させたのとは対照的だ。

自治体の取り組み格差はすでに被災地の住民生活に大きな影響を及ぼしている。

(本誌:岡田広行 =週刊東洋経済2011年10月22日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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