分析力だけでなく仕事に「直感」が必要な納得の訳 憑依力こそ最高の成果を生み出すスキルである
著者が直感を使って決断している様子は他にも見られます。本書を読んで、優れた分析的・戦略的思考によりアメリカ任天堂を復活させた男が、実は、折に触れ直感を信じて決断してきたというのも1つの発見でした。
私も、クリエイティブな課題解決において直感を重視しています。もちろんデータによる分析も重要なのですが、データが人々の実相のすべてを表しているわけではありません。私たちの会社では課題解決を進める際、直感を基に仮説を組み立てて、その答え合わせとしてデータを活用する、という順番で物事を進めることが多いです。
直感を磨くカギは「好奇心」
ここでいう「直感」とは、偶発的なひらめきに頼るということではありません。直感とは、自分とは異なる年齢、収入、立場など多種多様な属性からのものの見方・考え方を想像し、さらにはそこを自分自身に「憑依」させることができる能力であると私は考えています。
つまり直感は1つの能力であり、日々の意識と行動によって磨くことができる。そのカギとなるのは「好奇心」です。世の中に対する好奇心、人に対する好奇心をもって目を向け続けることで、自分とは異なる属性の人になりきる、その人を自分に「憑依」させる能力が磨かれるというわけです。
たとえば、「なんとかする会社」をスローガンに掲げている当社では、さまざまな業界のクライアントの課題解決に取り組んでいます。クライアントごとに業種も異なれば、ターゲット層も違う。そこで確実にターゲットの心に響き、売り上げアップにつながるプロモーションなどの戦略を提案してクライアントの課題を解決する――つまり「なんとかする」には、そのときどきで異なるターゲットになりきって考えてみることが欠かせません。
40代のオジサンでも、時には「女子高生」になりきる。自分との差異が大きいとデータに頼る部分も多くはなりますが、自分とは異なる属性の人に自分に「憑依」させるという意味での直感が、ここで役立つのです。
このように直感を磨くと、筋のいい仮説が立てられるようになるわけですが、そこで重要なのはターゲットの「本当のペイン」をつかむことです。
ペインとは「痛み」、つまりターゲットが痛みを感じている困り事、課題を正確に把握してこそ、有効な解決法を提案することが可能になるということです。課題設定には「これが課題だ」と思い込むあまり、もっと本質的な課題を見過ごしたり、いらぬバイアスに惑わされたりしかねないという落とし穴があるため、まず「本当のペイン」をつかむことが欠かせないのです。
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