トランプに描かれる、人間の変わらない本質 英雄は「富」にも「愛」にも貪欲だ
なるほど……。偉くなるヤツっていうのは今も昔も同じものなのか。それぞれのカードを、会社の若手社員と上層部だと思って眺めると、なかなか人間臭くて面白い。
スペードのエースに隠されたさらなる物語

さらに、トランプには面白い「差」がある。それは「スペードのエース(A)」だ。
4枚あるエースの中で「スペードのエース」だけが真ん中のマークがひときわ大きく複雑なデザインになっている。高橋氏によると、これには明確な歴史上の理由があるという。
起源は16世紀のイギリス。当時、イギリスではトランプを売るときに税金が課せられていたのだが、販売側が役所に税金を納めに行くと、その支払い証明としてスペードのエースにハンコを押した。そしてこれが販売許可の証明書となったのだ。
が、この手のものにありがちなのが、偽造犯罪。ルールを作れば何とかズルをしようとするやからがあらわれ、また厳しいルールが作られて……といういたちごっこが勃発した。偽造防止にやっきになった役所側が次第にマークを大きく複雑なデザインにしたため、その名残が現在のスペードのエースにも残っているのだという。
1000年以上の歴史を持っているとされるトランプ。いったい誰が発明したのかわからないが、世界中の幅広い地域でこれだけ長らく親しまれているのは、大掛かりな道具などなくても、手のひらサイズの計53枚のカードを使えば、さまざまな遊びができるという考え抜かれた仕掛けがあるからだ。古今東西代わらない人間の本質に迫る意味が込められている絵札に、トランプ発明者の思慮深さが透けて見える。
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