東大辞めてミネルバ大に進んだ彼の人生の選び方 日本で多少勉強ができたとしても外に出れば無力

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実際に煙山さんが行った対策は以下のようなものだったという。

「調べてみると、授業の復習で培ってきた基礎学力だけでは東大は受からないと気づきました。そこから昭和的な言い方になりますが、とにかく“気合い”です(笑)。一日15、16時間ほど机に座り、目が開かなくなるくらい東大向けの受験対策に打ち込みました」

結果、第1志望だったスタンフォード大学は不合格となるも、東大とUCバークレーに合格。UCバークレーは学費が高いことに加え、講義形式で学ぶというスタイルが合わないと考えて、東大へと進んだ。

東大に物足りなさを感じるように

しかし、煙山さんが入学した年はまだコロナ禍の影響が色濃く残っていた。1、2年時は対話型の授業は限定され、動画を見るだけという講義内容の多さも目についた。また、ア式蹴球部(サッカー部)に入部するも、まだ怪我が癒えず、プロサッカー選手になるという夢も諦めるようになった。こうしていつしか大学に行く意味を感じられなくなっていった。

「これなら独学で勉強したほうがよくないか?と思う自分もいました。東大は“自由な大学”なんです。例えばアメリカの大学だと半ば強制的にテストで点を取るために勉強を強いられますが、東大だとそこまでしなくてもある程度で点はとれる。

だから1年生から研究室に入る人もいれば、サークルに全力を注ぐ人もいる。起業のための準備をしたり、アルバイトに精を出す人もいます。つまり自由に使える時間も多いなか、その環境に流される面もある。非常に良い大学ですが、私には刺激が足りないな、と感じることもありました」

いつしか煙山さんは自分の要望を満たす大学がないか調べるようになっていった。そこで見つけたのがミネルバ大学だった。

同大学はペーパーテストは基本なしで、ゼミも超少人数制。在学4年間で7カ国に滞在し、フィールドワークや思考力や論理力を重視するという点も魅力に映った。

キャンパスは持たずに授業はフルオンライン。1学年に約200人と少数で、生徒のうちの約8割が留学生なことも驚いた。自身が描く「海外を旅しながら社会課題を解決するリーダーになる」という将来像にマッチするとも感じた。

ミネルバ大の受験では、発想力や思考力を問う独自のテストに加え、課外活動も重視される。自身が本気で打ち込んできたサッカーも大きな加点要素となり、合格率約2%という狭き門を突破した。

周囲からの反対は強かったが、東大を辞めて“よくわからない大学”へ行くという選択に後悔は微塵もなかった。

後編「東大→ミネルバ大→サッカー選手を目指す生き様」へ続く

栗田 シメイ ノンフィクションライター

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くりた しめい / Shimei Kurita

1987年生まれ。広告代理店勤務などを経てフリーランスに。スポーツや経済、事件、海外情勢などを幅広く取材する。『Number』『Sportiva』といった総合スポーツ誌、野球、サッカーなど専門誌のほか、各週刊誌、ビジネス誌を中心に寄稿。著書に『コロナ禍の生き抜く タクシー業界サバイバル』。『甲子園を目指せ! 進学校野球部の飽くなき挑戦』など、構成本も多数。南米・欧州・アジア・中東など世界30カ国以上で取材を重ねている。連絡はkurioka0829@gmail.comまで。

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