BPOの大義はあくまで言論・表現の自由を守ること 元BPO委員「コンプライアンスにもほどがある」

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例えば、2006年の「要望」では、「幼い少女に過度に性的な姿態を演じさせ、それを競わせるような番組は、少女を性的対象視するものに他ならない。(中略)さらには、本来成人による児童の性的搾取あるいは性的虐待ととらえられるべき、いわゆる“援助交際”を、単なる風俗上の関心のみで扱った情報系番組が散見される」としている。2013年の委員長談話も2014年の番組審議も、2006年の要望に沿って行われている。

青少年委員会では「卑わいとみなされる表現」に関して、「児童ポルノ禁止法(「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」)」などをもとに検討が行われているのである。

「児童ポルノ禁止法」が平成26年に罰則強化されたように、青少年の性的表現についてはますます厳しい目が向けられている。放送番組に対する青少年委員会の要望は、そのような社会動向を背景にしている。

ここではBPO青少年委員会の意見書の審議対象が、暴力についてはバラエティ番組における「他人の心身の痛みを嘲笑する」演出、卑わいとみなされる表現については児童ポルノをめぐる表現という、限定された範囲のものであることを確認しておきたい。

「うす味」の番組が多くないですか

ここから書くことは、BPO委員の経験とは離れたまったくの筆者の私見である。最近、NetflixなどのOTTを通じて韓国やアメリカなどの海外ドラマを見る機会が格段に多くなった。そうすると日本のドラマが、どうも「うす味」に感じるのである。

いくつか具体的な例をあげてみよう。ソウル市長選を描く韓国ドラマ「クイーンメーカー」(2023年)では、財閥と搾取される庶民、暗殺も含む悪辣な手段で対立候補を陥れる財閥、連帯して対抗する主人公たち、そこに他の政党の候補者も加わり、熾烈な選挙戦が展開される。

英米合作の「アウトランダー」(2014年からシリーズ継続)は、タイムスリップによるファンタジーでありながら、スコットランド独立をめぐる内戦、独立前のアメリカ大陸移住、ネイティブアメリカンの虐殺など、史実を織り交ぜながらドラマが展開していく。

「クイーンメーカー」の財閥や政党などの描写はドラマ的な誇張もあるかもしれないが、韓国社会の暗部を描くことに忖度はない。「アウトランダー」では、戦いは血で血を洗う肉弾戦だし、主人公カップルのセックスシーンもある。

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