「日本は、これまでに十分な謝罪をしてきた」 岡本行夫氏「70年談話は未来志向で」

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――三菱マテリアルがこの対応方法を、日本企業のために労働を強いられた中国人労働者に拡大することを決めたのはいつなのか。

中国人強制労働者は、POW問題とは別に訴訟が継続していた。中国人の問題は、米国人捕虜の問題と同じではない。しかし、三菱マテリアルは民間企業としてこれらの労働者を使用しており、そのため、同様に謝罪する必要があると、意見が広がっている。相違点は、米国人捕虜が金銭的賠償を要求しておらず、謝罪のみを要求していたことである。一方、中国は金銭的賠償を要求している。

――経団連や個々の日本企業からの反応は、どうだったのか。批判を受けたのだろうか。

この件について経団連やほかの企業と接触していない。独自の判断に基づき、今回の決定を行った。私が知っているのは、さまざまな企業にいる、個人的な友人達も支持してくれている。

ほかの企業に影響はするのか

――しかし、これはほかの企業に対しても重大な影響を及ぼすのではないでしょうか。

私にはわかりません。実際に強制労働者として捕虜を使っていたほかの企業の幹部とは、話をしていないからだ。私が話をした人々は、ある種の日本の常識を代表しているように思う。しかし、捕虜を労働者として使用していたほかの企業がどのような決定をするのかはわからない。三菱マテリアルは三菱鉱業を継承したが、別法人であると主張することもできた。

それにもかかわらず、三菱マテリアルは、自分の責任と考え引き受けた。三菱マテリアルは今でも大企業だが、強制労働者を使用していた炭鉱会社の中には、日本の石炭鉱業がほとんど消滅した結果、現在は非常に小さな企業になっているところもある。このような会社がどのような決定をするのかはわからない。

――実業界全体を巻き込んで、強制労働者に対する賠償基金を設立する考えはないか。

私の知る限り、そうした計画はない。経団連とは話をしていないし、ほかの企業の方針について指示をするような立場にはない。

――外務省の反応はどのようなものであったのか。 強制労働者に対する賠償の提供は、日本政府および民間企業に対するあらゆる請求はサンフランシスコ平和条約により解決済みであるとの、長年の政府の立場に反しているが。

外務省の友人達は、三菱マテリアルが民間企業として米国人捕虜に対し謝罪を行う決定を行ったことは、個人的には理解していると思う。外務省は、このPOWの請求権は平和条約により解決されており、法的安定性に留意しなければならないという立場だが、かと言って民間企業の謝罪と和解に反対するということはしない。

――これは、外務省職員との非公式なやり取りを通じての、あなたの認識なのか。それともこれを、外務省の公式な立場の変更とみなしているのか。

外務省の公式な立場はそちらで確認してほしい。外務省として三菱マテリアルの決定に異議を唱えることはない、ということだ。

――中国はどうか。中国政府関係者とやり取りをしているのか。また今回の件は、日中関係により大きな影響を及ぼすと考えているか。

外務省が何もしていないはずはなく、少なくとも中国側政府とは意見交換を行っていると思う。しかし、政府レベルの議論の内容は知らない。

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