スズキとダイハツの明暗を分けたものとは? 好調スズキにあの有力投資ファンドも触手

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通期計画の営業利益(前期比5.9%増)、純利益(同13.6%増)については、当初の予想を据え置いた。会見でスズキは、計画に対する進捗度合いを明言しなかったが、インドは上振れ、その他は下振れていると見られる。この傾向が続けば、通期の営業利益が予想を上回っても、純益の計画達成は厳しくなるかもしれない。

スズキの第1四半期決算会見。会社側はインド以外の土台強化を強調した。

今後は、日本国内のテコ入れや、「日本、インドに続く第三の柱」(鈴木俊宏社長)と位置づけるアセアン、「インドネシア、タイでの土台作りを進めていく」(長尾取締役)という点が課題となる。

こうした中、ダニエル・ローブ氏が率いる米国のファンド、サード・ポイントは、7月31日付の投資家向け書簡でスズキ株へ投資していることを明らかにした。サード・ポイントは「物言う株主」として知られており、日本企業ではソニーやファナックなどの株式に投資し、株主還元の強化や事業再編などに注文をつけてきた。

株価が上がると、痛しかゆし

サード・ポイントは、スズキのもっとも本質的な価値は56%保有するマルチ・スズキと指摘。インド市場の成長力やマルチの競争力を高く評価し、マルチを含むインド事業の価値などがスズキの時価総額に反映されていないと主張している。また書簡の中で、独フォルクス・ワーゲン(VW)との資本提携解消問題がスズキの企業価値を下げており、それが決着すれば、インド事業の拡大につながるとも強調している。

今のところ具体的な要求や提案はしておらず、スズキ株の割安感を自社の投資家に説明するにとどまっている。だが、サード・ポイントによる株取得が明らかになった8月3日、スズキ株は他の国内自動車メーカーの株価が下落する中で同日比147円高、3.4%の値上がりとなった。

この株価上昇は痛しかゆしだ。スズキは、係争中のVWとの“離婚”が認められた場合、VWの保有する約20%分の株式を自社株買いで引き取る意向を示している。となると、株価上昇は買い取る資金負担の増加につながる。VWがスズキ株取得に投じた金額は2289億円。現在の時価でこれを買い戻すとなれば必要資金は5000億円にもなる。いつ売り払うとも知れない投資ファンドが目をつけたことで、株式相場で”人気化”するのは、スズキにとって招かざる事態といえる。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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