TPPが漂流すると日米とも痛手が大きい 8月末が合意のラストチャンス
[ラハイナ(米ハワイ州) 1日 ロイター] - 環太平洋連携協定(TPP)は、今回も最終合意が先送りされた。交渉をリードする米国の政治日程を考慮すれば、甘利明TPP担当相が言及した8月末までの次回閣僚会合が「ラストチャンス」になる。
もし、TPPが漂流すれば、アジアインフラ投資銀行(AIIB)で勢力拡大を狙う中国に対し、日米は有力なけん制カードを失うだけでなく、日本は成長戦略の見直しを迫られる。日米にとってこの1カ月間は正念場だ。
「今回を最後の閣僚会合にする、すべての国がそういう思いだ」――。こう何度も会見で繰り返してきた甘利明TPP担当相。だが、その思いは果たされなかった。
12カ国の閣僚と交渉官は、7月28日から31日まで連日、2国間交渉を断続的に開き、詰めの作業を進めたものの、合意の前に立ちはだかる溝を埋めて前進することはできなかった。
発足メンバーNZの意地
TPPは、もともとはシンガポール、チリ、ブルネイ、ニュージーランドの4カ国で交渉が始まったが、後から参加した米国と一番最後に参加した日本が、途中から主導権を握る。「例外なき関税撤廃」によって高度な自由貿易のルールを作るという当初の「高い目標」には、次々と例外的な条項が付加された。
最終段階になって、この動きに反発したのは、オリジナルメンバーのニュージーランドだった。一貫して自国の乳製品に対する市場開放を求めてきたが、米国、日本、カナダなど自国の酪農に対する保護政策をとっている国が例外規定を提案。対立はついに解けず、7月31日を迎えてしまった。
甘利担当相は、名指しこそ避けたものの「ある国が、過大な要求を他国に求めている」とニュージーランドの姿勢を批判した。
これに対し、7月31日の共同記者会見で、記者から「TPPを脱退しようと思ったことはないか」と質問されたニュージーランドのグローサー貿易相は「われわれはTPPの当初のメンバーだし、最初のペーパーを書いたのは私だった。TPPを脱退しようと思ったことはない」と答え、自国の主張の正しさを訴えた。
乳製品だけでなく、医薬品の特許をめぐり、12年間を主張する米国に新興国は5年間を提案。対立を解きほぐすため、日本政府は8年間の妥協案を提案したとされるが、最終合意は見送られた。
妥協が近いとみられていた自動車分野でも対立が残っており、甘利担当相が示した8月末ごろまでの次回閣僚協議までに、本当にこれらの対立点が解消されるのか、各国の交渉担当者からは、楽観的なコメントは出たものの、合意を確信していると明確に指摘した発言はついに出なかった。