三陽商会「真夏も服を売りたい!」大変貌した理由 夏の長期化に暖冬も、アパレル業界の深刻問題

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今年7月は、主力ブランドの「マッキントッシュ フィロソフィー」や「ポール・スチュアート」において、裏地がなく通気性のいいジャージー素材のジャケットやキシリトールなどの成分を特殊プリントした接触冷感生地のカットソーなどが売れた。

8月は以前なら秋物の早期展開をしていたが、今年は盛夏シーズンと同様の夏向け素材を使った商品を投入する。これは長引く暑さの中で夏物商品が不足し、販売機会ロスに苦しんだ昨年の反省が生かされている。

夏から秋口まで着用できるような素材や色の商品も投入している(写真:三陽商会)

夏物の中でも、秋をイメージした色のジャケットや薄手の羽織物、5~7分袖のトップスなど、秋にもそのまま着用できるデザインを狙っている。

夏物を増やすことで、収支改善も期待できる。アパレル企業にとって、コートやジャケットなど高単価の商品が多い冬は一番の稼ぎ時。一方で、商品の単価が比較的安く、重ね着の需要も少ない夏は、稼ぎにくい季節だ。

それは三陽商会も同じで、以前は上半期(3~8月)の赤字を下半期(9~翌年2月)で挽回する傾向が強かった。だが今年は「今すぐ着られる夏物の色・サイズのバリエーションが豊富なため、定価での販売が順調」(広報)という。今後、季節間の収益力の差がどう変化するか注目だ。

猛暑を過ぎても「暖かい冬」がやって来る

もっとも、問題は夏の暑さだけではない。年々暖冬傾向が強まっていることもアパレル業界の逆風となっている。2023年の冬は、業界にとって“短く、厳しい”冬だった。

三陽商会はミドル~ロングの丈が比較的長いコートや、中綿ダウンなど防寒力の高いアウターを多く用意したが、暖冬で苦戦を強いられたという。

大江伸治社長はこう振り返る。「前期(2023年度)の上半期はリベンジ消費もあり、極めて好調に推移した。しかし、下半期は暖冬の影響で非常に厳しかった。基礎的な商品力や販売力についても、一度立ち止まって見直す必要があると考えた」。

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