「ブラックぺアン2」"考察少なめ"でも面白いワケ 猛暑の今夏だからこそ求められる「王道エンタメ」
もちろん、違いはそれぞれある。
渡海は病院に住み着いているような変わり者で、タバコをニヒルに吸っていて(最近はタバコシーンはコンプライアンスが厳しくなって描かれなくなった)、ちょっと昭和のヒーローのような雰囲気もあった。
論文を書かないので出世ができず、ほかの医師が手術に失敗したときフォローして、退職金を巻き上げることから、「オペ室の悪魔」の異名を持つ海渡は、いかにも現場派である。
対して、天城は、芸術家肌で、髪の毛は銀髪、フランス語を用い、自信満々で、自分の才能を大金に代えようとするドライなところがある。それぞれの役に付与されたディテールを二宮は適切に演じている。
身長はそれほど高くはないのだが、背のしゅっと高い竹内涼真と並んで歩く場面でも、引けを取らない不思議な貫禄、スター性が二宮和也にはある。こういうとき、二宮にはセンターを張ることを宿命付けられた者なのだと感じる。
「神に愛された悪魔」ではないが、神に選ばれし者――。だからこそ、多くの人が見守る中での公開手術をアーティストのようにやってのけるという役割もハマる。
『VIVANT』(2023年、TBS)で脇に配置されていると逆に収まりが悪く見えたが、『ブラックペアン シーズン2』で堂々とセンターにいると安心する。センターにいるにもかかわらず、どこか斜に構えている感じが個性であり、斜に構えているのに視聴者の視線を集中させてしまう不思議な魅力。街の片隅にいそうな親しみやすさも失わない、なんとも魅力的な俳優・二宮和也を得て、日曜劇場は久々の王道として輝く。
「朝ドラヒロイン」の因縁共演
ところで、まったくの余談だが、『ブラックペアン シーズン2』のささやかな楽しみは、朝ドラヒロインの共演である。看護師の花房(葵わかな)と猫田(趣里)だ。
前作のとき、葵が2017年度後期『わろてんか』でヒロインの大役を終えたばかりだった。趣里はまだ朝ドラヒロインではなかったが、2023年度後期の『ブギウギ』でヒロインになった。葵の役のモデルは吉本興業の創設者にして、『ブギウギ』のヒロインのモデル・笠置シヅ子の恋人の母であるという、奇妙な因縁共演を朝ドラファンなら楽しめる。
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