「ブラックぺアン2」"考察少なめ"でも面白いワケ 猛暑の今夏だからこそ求められる「王道エンタメ」

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「神に愛された悪魔」が主人公の『ブラックペアン シーズン2』。またしてもダークヒーローものか、とか、最近の主人公はひねった人物が多いなあとか思わせながら、天城は第3話にして早くも、弱き者の味方な部分を見せている。

街のケーキ店の人気アップルパイのレシピの権利や(第2話)、生活保護を受けている人物の人生を賭けることで(第3話)、結果的に患者とその身内の可能性を拓いているのだ。生きるにはお金が大事。そのお金をただただ誰かに巻き上げられるのではなく、自分で守り、あるいは作り出し、そうやって苦境に諦めることなく生き抜け、というように。

いまや、複雑な世界に勧善懲悪は単純すぎて、逆に作り事に感じてしまい退屈に見えるとはいえ、主人公が悪魔すぎても見ていて心が荒んでしまう。やっぱり悪魔よりも、悪魔の顔をした神であるほうがホッとするではないか。

また、第9話くらいまで主人公の謎を引っ張りに引っ張って、最後の最後でドンデン返し的な意外な展開を見るドラマもおもしろいが、こんなに猛暑で疲れているときに、もやもやと主人公の真意が見えないまま、はぐらかされ続けるような内容を辛抱強く追いかける気力はいまの日本人にはないだろう。

たぶん前期の『アンチヒーロー』を今夏にやっていたらしんどかったと思う。その点『ブラックペアン シーズン2』は実に見やすい親切設計だ。最後に流れる主題歌は小田和正のやわらかな高音で、天に昇るような心地を毎回得ることができる。

考察は少なめでいい

第3話のラストで天城は、若手医師・世良雅志(竹内涼真)を新病院の建設予定地につれていく。海を見下ろすすてきな場所で、そこに桜並木を植えたいと天城は夢を語る。

ソメイヨシノの寿命は約70年、人の一生と同じくらいの桜とともに、この街の人々を見守り続ける病院を作りたいと思っている、と実にヒューマンなことを語る天城は、全然悪魔じゃないではないか。

まだ第3話にもかかわらず、こんなに早く、主人公の仮面を剥いでしまっていいのか。いや、いい。たとえ、主人公の意外な善良な面が明かされたとしても、彼をとりまく病院の人々の陰謀や、前作の主人公との関係の謎ががっつり残っている。

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