日経傘下入りで気になる「FTの強み」の行方 孤高の勝ち組経済メディアの強みとは?
もうひとつ、特筆すべき大きな特徴が、自前でのデジタル・テクノロジー開発に積極的に投資している点だ。例えば社内にサイトやアプリの開発、研究を行う特別なチームを置いている。研究・開発メンバーはそれぞれがテクノロジー企業での勤務経験がある。
また、読者(=オーディエンス)を測る独自の方法を編み出し、これを「平均の日間グローバル・オーディエンス(Average Daily Global Audience=ADGA)として発表している。紙媒体、電子版、パソコン、モバイルなど、読者は様々な形でFTを閲読している。どのような形にすれば、「真の読者の姿」を描くことができるのか。試行錯誤を続けながら、FTは自らの手で指標を作っている。
編集室、ジャーナリズムのデジタル化
日経の幹部は記者会見でFTグループ買収の狙いを「グローバル化、デジタル化」という2つのキーワードで説明した。編集のデジタル化はまさにFTの強みの1つだ。
ライオネル・バーバー編集長の指揮の下、FTは電子化・デジタル化を積極的に進めてきた。適宜、人員の入れ替え(デジタル経験、知識が高い人材を雇用する代わりに、既存人員を削減)し、紙媒体と電子版の編集室を統合させてもいる。
2014年からは本格的な「デジタルファースト」(電子版を主とする)方式にすることを、編集長は2013年秋のスタッフに向けた手紙で明らかにしている。
デジタルファーストで行うことの要点を紹介すると、「電子版から紙版を制作する形に転換する」「印刷版は1日に1版のみ」、「ウェブサイトは常時更新」、「デスク、記者レベルでは速報よりも文脈を重視する」「オリジナルの、調査ジャーナリズムを提供する」、「編集スタッフは読者との対話を奨励する」。目指すこととして、「読者のエンゲージメントを高め、読者の要求に合わせること」としている。
「読者の要求に合わせる」ために開始したのが、短文ニュースのサイト「FastFT」(ファーストFT)(2013年5月から)である。
FastFTは、例えばPCでウェブサイトを開けると、右コラムに表示される。クリックすると、FastFTの画面になる。カテゴリー(経済、マーケットなど)の次に1行の見出し。いつ出たか(何分前かなど)の表記があり、その下には1つの文章、あるいは1つか2つの段落の文章が入る。短いが一通り話がわかる。
詳しく読みたい場合は、「オープン」というタブをクリックすると、短い記事が読める。FTの記事にリンクする場合もしない場合もある。速報を素早く知りたい場合、他のサイトに行くのでなく、FTで読んでもらうことを狙っている。通常の長さの記事を読ませることは目的とはしていない。数人のベテラン記者が24時間、速報を流している。
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