日経新聞の課題、高まる現場の"経営不信" 連結経営強化で起こったハレーション

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日経の課題 高まる現場の“経営不信”

この1月から、日経新聞のグループ各社には、連結経営強化のための新しい月次会計システムが導入された。子会社の月次決算を翌月の15日までに本社がすべて把握できる仕組みで、本社による損益管理が徹底される。昨年1月に断行した持ち株会社化に続くグループ経営の強化策だ。

子会社で人材流出の危機

日経本社からのグリップ強化に対し、子会社からは反発の声も上がっている。日経グループを支える主要子会社を見渡すと、出版の日経BPにしろ、金融情報配信のQUICKにしろ、40年の歴史がある。現場には日経からの転籍社員や中途入社社員も多いが、中心にいるのは生え抜きのプロパーだ。にもかかわらず、歴代経営トップは日経本社からの“天下り”。しかも、いずれは日経の社長と目されたものの、最後の土壇場の出世争いで敗れたような“大物”が送り込まれることも多く、現場のプロパーとしてはたまらない。本社に対しては、“面従腹背”とでもいうべき、独特の空気が漂っている。

杉田亮毅社長(当時)は新年の全社部長会において「経営改革にはグループ内からは本社への報告事項が多くて煩わしい、本社が官僚化して統制が厳しいという不満もあるようです」と言及した。

続けて、「新しいアイデアが出るのを妨げ議論を許さないようなことを官僚化と呼んでいるのであれば、排除しなければならない。が、本社への報告が増えて面倒なことを官僚化と言っているのであれば、批判する側が間違っている」と語った。まさに正論だ。しかし人情は、正論だけで押さえることはできない。

今年7月に日経BPに吸収合併されて消滅する日経ホーム出版では、合併に嫌気して看板雑誌の編集長などが、3月末に早期退職制度を利用し会社を去った。

人材流出ということでは、日経BPも同じ悩みを抱える。日経BPは『日経コンピュータ』『日経パソコン』など、ネットとの親和性が高いIT関連の専門雑誌を多数発行しており、ネット化の流れにより雑誌販売部数・広告収入の双方に大きな影響が出た。

が、同社では広告・編集が一丸となって思い切ったネット対応を実施。今では、雑誌読者に限定した会員制ウェブサイト「NBオンライン」が読者に支持されており、広告スポンサーからも読者ターゲットの明確な広告媒体として高い評価を受けているという。雑誌とネットを組み合わせたクロスメディア戦略は利益面でも着実に貢献しており、2007年12月期の経常利益は34億円強と4期連続で増益となった。

実は出版社のネットビジネスが成功している例はほとんどない。日経BPは数少ない成功事例の一つだ。そのため、会員制サイト強化を目指すネットベンチャーなどから見ると、日経BPにはのどから手が出るほど欲しい人材がそろっている。「今の最大の懸念は人材流出問題。子会社扱いを受ければ、面白くないと感じるのが人の情。このままでは若手が離れてしまい、足元から崩れるかもしれない」と日経BPの中堅幹部は危惧する。

そもそも、日経BPの旗艦誌『日経ビジネス』編集長は、歴代、日経本社からやってくる幹部候補生が務めており、生え抜き編集長が一人も生まれていない。歴代の社長も日経出身者だ。「日経からの出向者と日経BPプロパーでは同じ仕事をしていても給与水準が違う。どうしても、プロパーは白けてしまう」(日経BP中堅社員)。

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