日経新聞の課題、高まる現場の"経営不信" 連結経営強化で起こったハレーション

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

3月28日に就任した喜多恒雄社長は、過去の業績ではなく今の貢献を基準とする“時価主義”の人事評価を提唱。目の前の仕事に愚直に取り組んでいる社員を高く評価するよう、管理職に呼びかけている。重要なのは、公平さだという。「人事で公平さが欠けていると、社員のモラールは低下し、職場の雰囲気は悪化する。公平さを徹底して保つように心掛けること。私自身も公平さを保つよう心掛けます」。

日経OBは日経の経営課題を次のように分析する。「情報機関という方向にアクセルを踏めば、とにかく走って、話を聞いて、そして書く、ということばかり重視する。しかし、これらはジャーナリストの必要条件にすぎず、十分条件としてフェアネスの感覚が不可欠だ。そうした教育がされていない記者が出世していくから、フェアネスの感覚がない経営幹部も育ってしまう」。

本社・工場の償却負担が圧迫

今後数年は、財務を揺るがしかねない大きな懸念材料がある。日経は現在の本社から西へ200メートルほど離れた場所に新本社ビルを建設中。来年3月に完成予定だ。地上31階、地下3階で、現本社ビル床面積の1・5倍の広さになる。ITで稼ぐ時代の日経を象徴し、最新鋭のITインフラを備えたビルになるという。しかし、大きさはやや中途半端。もう一回りサイズが大きければ、一つのビルに、日経BPなどのグループ会社を集結させ協業強化を加速できるのだが、とてもそのようなスペースの余裕はない。

新本社ビル建設に必要な費用は475億円。大きな設備投資は新本社投資だけではない。多ページをカラー印刷できる高速輪転機設備を東京地区で次々に導入。新工場建設もあり、過去2年だけでも印刷設備に308億円ほどをつぎ込んだ。部数急増に合わせて全国に分散印刷体制を敷いていった時期とは異なり、部数がそれほど伸びない中で新聞の付加価値を上げるための工場投資だ。

現在の高い利益水準が続くのであれば、財務のバランスを崩すことはないだろう。しかし、デジタル事業の利益成長が前期のように足踏みし、企業からの広告出稿の減少が今後も続いてしまえば、減価償却費負担がピークを迎える09年12月期に、大幅な利益悪化に襲われる可能性もある。

「再開発の誘いがあったとはいえ、新聞の先行きが不透明な今の時期に新本社を建設する感覚がわからない。工場も自前投資を抑え委託印刷を増やすのが当然だろう。同じ積極投資を行うのであれば徹底的にIT関連へ投資するべきだった。それが今の時代の常識というものだ」とベテラン記者は苦々しげに分析する。

日々、企業を取材し、その問題点を見つけ出して指摘するのが、日経の記者。自社の経営に対しても辛辣な意見を持っている記者が多い。こうした不安・不満の声は、経営中枢まで届いているのだろうか。

山田 俊浩 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事