4割が月経異常、アスリート「婦人科問題」の深刻 10代の減量で「骨折リスク」を生涯抱えることも

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「とくに身体が発育・発達過程にある10代で過度な減量はするべきではありません。引退後に月経が再開しても骨密度は低いままなので、骨折のリスクを生涯抱えながら生きていくことになります。私が診てきた中で、20代から骨粗鬆症の薬を飲んでいる選手が引退後、同年代女性の平均値に戻ったケースは一例もありません」

現状、婦人科医が学校に入っていく仕組みはないので、「学校でスクリーニングを行って月経や骨密度に問題がある子をすくい上げてほしい」と能瀬氏は話す。

例えば、紙やアンケートフォームなどの回答しやすい形で、「最後に月経がきたのはいつか」「生理痛の薬は飲んでいるか」「月経前や月経期間の体調不良はあるか」という3つの質問を定期的に行い、養護教諭や部活動の女性マネージャーなどの女性がチェックする。月経が3カ月きていないなら無月経が、強い生理痛があるなら将来の子宮内膜症のリスクが高い。早めに対策や予防が取れるよう医療機関につなげてほしいという。

「今後は部活動の地域移行により、委託された団体によっても婦人科問題への対応は差が出てくると思うので、スクリーニングは学校でやっていただきたいですね。とくに無月経の問題は、選手の子に限らず、ダイエットなどで骨密度が低くなっている子の健康を守る一助にもなります。10代では本人が月経異常に気づかないことも多いので、月経や栄養の正しい知識を小学校から系統立てて段階的に教える必要もあると感じています」

婦人科問題はアスリートだけの課題ではない

一部のトップ選手に限らず、中高生にも知ってほしい婦人科問題。しかし、これらはアスリートだけの問題ではないと能瀬氏は話す。

「現在、妊娠中や産後のトレーニング課題の研究や、パラアスリートのサポートにも力を入れていますが、こうした研究で得られた知見を地域にも展開していかなければと思っています。また、日本は20~30代女性のスポーツ実施率が低いので、もっと女性がスポーツを楽しめるようなポジティブなエビデンスも示すことができたらと考えています」

アスリートに限らず、すべての女性が自身の心身のコンディションの変化を把握して運動に親しむことは、高齢化が進む中で長く健康でいるためにも欠かせない視点だ。

東洋経済Sports×Innovationでは、スポーツや運動を「知る」「観る」「楽しむ」ことで社会・日常・心身にもたらされるイノベーションを発信しています。
吉田 渓 フリーライター

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よしだ けい / Kei Yoshida

神奈川県出身。大学在学中からフリーライターとして執筆活動を開始。近年は心と身体、教育、ワークスタイルなどを中心に執筆を行う。ライフワークは農業や漁業にまつわる言い伝えや桜の言い伝えを調べること。著書に『働く女のスポーツ処方箋』がある。

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