「日本化」する世界経済 生産人口、技術進歩に制約 低成長、デフレを前提に考える

ギリシャは小国で救済は可能だ。粉飾決算に対する批判は理解できるが、イタリアやスペインのソブリン危機、さらには金融システム危機へ連鎖することも考えれば、ドイツはその阻止を優先してもよいはずだ。しかし、政治的に苦しくなると国内世論が優先される。

ユーロは、金融政策は共通で財政政策はバラバラという弱点を市場から打たれた。そこで共同債の発行を目指し、財政統合の方向に動き始めている。だが、問題はそれだけで解決するのだろうか。日本の東京電力福島第一原子力発電所の事故をきっかけに、ドイツは原発廃止、フランスは原発推進と、ユーロの盟主の政策が真逆となった。活断層のあるライン河畔、かつては石炭と鉄鉱石をめぐって戦争の火種となったアルザス地方で、フェッセンハイム原発のリスクが新たな紛争の種となっている。

独仏には二度の世界大戦を父子・兄弟の殺し合いと考える宗教的基盤があり、再び戦火を交えないという社会的合意が形成されている。それでも戦争の記憶がない世代はユーロ維持への情熱が薄いかもしれない。

失業率が高止まりしているのに、各国とも緊縮財政を迫られている。負担は特に若者に集中しがちだ。欧州ではデモは日常茶飯事となり、英国では暴動にまで発展した。イスラム教徒排斥の動きも強まっている。偏狭なナショナリズムに陥る危険性は大きい。ノルウェーの若者の銃乱射事件の後、ドイツの警察はネオナチ組織の一斉取り締まりに動いた。

米国でもティーパーティの台頭や民主党下院議員の襲撃事件が起こった。愛国者法の施行後、FBIが民間人を密告者に仕立てるなど、さながらソ連支配下の東欧諸国のようで、自由の国の魅力も色あせた。民主化革命で親米政権が倒れ、中東では、パレスチナ、イスラエル問題をめぐり、米国離れが進む。来年の大統領選挙ではブッシュ対ゴアのときより亀裂が深まるだろう。

高等教育の普及と情報通信の発展は、中東民主化のような明るい変化をもたらす一方で、先進国では国家不信、アナーキズムも生んでいる。象徴的なのがウィキリークスだ。

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