発表あるか?「熱中症特別警戒アラート」の危険性 もはや"災害級" 猛暑にどう対処すべきか

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ただ岡氏は、懸念材料として、エネルギーの供給面を挙げる。2019年に千葉県を中心に大きな被害をもたらした台風15号は、停電のため長期間エアコンが使えずに、8人が熱中症で亡くなった。

また国が今年3月に公表した電力需給の見通しによると、今夏の電力逼迫は回避できるはずだった。ところが7月上旬に東京都心の最高気温が36度を記録し電力需要が急増したため、東京電力管内は中部電力から電力融通を受けた。

国は電力の安定供給の確保に万全を期すとしているが、未曾有の猛暑が継続した場合、本当に大丈夫なのか、一抹の不安が残る。

全て個人の判断に任せるのは限界

気候変動への対応策は、「緩和策」と「適応策」の2つに分かれる。

「緩和策」は化石燃料を自然エネルギーに転換し温室効果ガスの削減を図ることなどがあり、「適応策」は洪水防止のインフラ整備、暑さに強い農作物の品種改良などがある。政府による「熱中症警戒アラート」などの情報提供も「適応策」の1つだと言える。

「適応策」が専門の岡氏は、この2つの策を「車の両輪」として推進する必要があるが、すでに顕在化している悪影響に対し「適応策」を講じることは「論を待たない」と語る。

一方、熱中症予防でエアコンの必要性をいくら説得しても、頑なに拒否する高齢者もいる。日本では国が、個人の自由な行動に制限を課すことはしないが、岡氏は健康被害に関わるため「個人の判断だけに任せておくことは限界がある」と指摘する。

そのうえで、一人暮らしの高齢者などに対しては、地域のコミュニティーが、情報技術なども駆使しながら、「見守り」や「声かけ」を一段と強化すべきだと語る。

人との接触を回避する必要性を強いられたコロナ禍を経て、他人や地域のつながりが希薄になった面は否めない。酷暑や熱中症との闘いは、「お節介」も含め、人とのつながりの重要性を見直す機会となるかが試されている。

伊藤 辰雄 ジャーナリスト

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いとう たつお / Tatsuo Ito

大学卒業後、ロイター通信社、ウォール・ストリート・ジャーナルなどで記者として、経済・金融政策、金融市場を中心に30年以上に渡り取材。現在は、フリーランス・ライターとして環境分野を中心に取材執筆するほか、会社四季報で食品関係の企業を担当。2024年3月上智大学大学院・地球環境学研究科修了(環境学修士)

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