【産業天気図・通信業】競争激しい携帯電話業界は番号ポータビリティが今年最大のイベント

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縮小

国内携帯電話市場は8兆円と巨大だが、すでに成熟して大幅な拡大は見込みにくい。したがって今06年度の上期、下期とも空模様は「曇り」と予想する。ただ、携帯電話サービスで07年の参入を予定していたソフトバンク<9984.東証>がボーダフォン<非上場>の巨額買収(1兆7500億円)に踏み切り、顧客争奪戦がさらに激しさを増す可能性が出てきた。携帯事業「au」(シェア2位)を収益の柱に据え、順調に契約者数を伸ばすKDDI<9433.東証>は、今年11月から始まる番号ポータビリティ(携帯電話会社を変更しても電話番号はそのまま持ち運べる制度。メールアドレスは変更する)をシェア拡大の絶好のチャンスと位置付ける。新たな料金割引やウォークマンケータイの投入など、サービスや端末を矢継ぎ早に投入し、拡大を図る腹づもりだ。
 シェア5割を超す携帯業界の王者NTTドコモ<9437.東証>は、番号ポータビリティで競争が激化する中、逆にシェア低下を防ぐ側。ただ、ライバルは限られており、番号ポータビリティで強敵になるのはauだけか。ボーダフォンはインフラ投資が遅れており、ソフトバンクはドコモと同等の通信インフラ作りが急務。さらに、巨額買収のための借り入れ1兆円も重荷で、ADSLのネット接続サービス「ヤフーBB」でブチ上げたような激安の価格戦略を展開するのは難しい。ヤフー<4689.東証>を収益柱に、大赤字だった「ヤフーBB」がようやく黒字化したところで大型買収を敢行したソフトバンクにとり、ボーダフォンのテコ入れは今年最大のテーマでもある。
 携帯電話業界で激しい競争が予想される一方、固定系ブロードバンド市場ではNTT<9432.東証>の光接続サービス「Bフレッツ」が急速に顧客を獲得している。昨年10月に「NTTの対抗軸を作る」として東京電力<9501.東証>と個人向け光サービスで包括提携したKDDIだが、事業統合の話は、いまだにまとまっていない。統合のメドは来年1月で、その結論を今年9月末までに出すという曖昧な状態にある。「ヤフーBB」で不動の地位を築いたソフトバンクも、携帯への経営資源投下で、さらに会員を増やす余力に乏しい。
 2010年の光サービス3000万回線(06年3月末で341万契約、06年度の純増目標270万契約)に向け、ひたすらスピードを上げるNTT。その影響で、光回線の工事業者に恩恵が広がっている。光アクセス工事大手のコムシスホールディングス<1721.東証>や協和エクシオ<1951.東証>など、大量の光技術者を抱える事業者は06年度以降も業績が拡大する見通しだ。
【井下健悟記者】


(株)東洋経済新報社 会社四季報速報プラス編集部

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