スターバックスやアップルが目指す方向は、その逆である。製品競争力が高ければ、顧客は次もリピートしてくれる。広告投資をしなくとも、客足は絶えることなく、評判を見聞きして新規顧客も着々と積み上がっていく。広告費が少なくなれば、その分利益が大きくなり、それを原資として製品・サービスの競争力を磨くことができる。
製品・サービスの弱さを広告費で補いながら、顧客離脱分を上回るような集客によって成長するビジネスモデル。
どちらが、善であるか。そして、ライザップ(チョコザップ)が目指すべき未来はどちらか。そう問われれば、皆さんももう答えは見えているのではないか。
静かなマーケティング革命「カスタマーサクセス」
この考え方こそが、21世紀のマーケティング界で静かに進行した大きなパラダイム転換である。
20世紀までのマーケティングは、右肩上がりの経済成長の中でいかに新規顧客を獲得していくかだった。マクドナルドもコカ・コーラもロレックスも、成長していくために積極的に広告を打ち、どんどん新規顧客を獲得し続けるマーケティングを行っていた。
だが、そんな時代は過ぎ去った。顧客は広告のクリエイティブやインスピレーションよりも、製品・サービスの持つ本質的価値を重視するようになった。新規顧客の獲得に躍起になっていたかつての企業は、現代では既存顧客を満足させることに力点を置くようになっている。いや、顧客満足(カスタマーサティスファクション)、などという生ぬるい話ではない。企業は顧客からお金をもらい、時間をもらい、その人の人生で叶えたいことのためにエージェントとして働いている。企業が担っているのは、顧客の人生における成功、「カスタマーサクセス」なのである。
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