そんな中で起死回生の一策として打ち出されたのが、チョコザップであった。「コンビニジム」をうたい、無人のトレーニングジムを定額料金で使い放題とした同事業は、競合の半値に近い、業界の常識を覆す価格で展開された。だが、その出店数の増大と、広告費用とがかさみ、赤字は拡大。その結果として、2024年3月期決算では、事業継続に黄信号が灯る状況となったのである。
ライザップが、ここから再び健全な経営状態に持ち直すためには、何が必要なのか。そのカギは、現在起こりつつある静かなマーケティング革命「カスタマーサクセス」にある。
企業が儲からない理由は3つのうちのどれか
ライザップの業績が振るわないのはなぜか。その理由は財務諸表である。以下が、RIZAPグループの損益計算書である。
損益計算書は、複雑怪奇なビジネスを読み解くうえで、大変に力強い資料である。会社が儲からない理由を、あまりにもあっけらかんと、明らかにしてしまうからだ。損益計算書は、事業活動をわずかに売上高、売上原価、販管費、そして営業損益という4種類の要素のみで読み解く。そこから見えてくるのは、企業が儲からない理由が、①売り上げが足りないから②売上原価が高いから③販管費が高いから、の3つのどれかでしかない、という単純明快な構図である。
こちらの資料を見れば、誰しもその答えは明らかだろう。RIZAPグループが儲かっていないのはなぜか。販管費が異様に高いからである。多大なTVCMに象徴されるように、広告宣伝費が嵩んでいるのだ。資金調達直後の、成長中のスタートアップでもなかなか目にすることができない割合である。まして、創立から長い年月を経て、上場から15年以上を経た企業で販管費が50%に達するというのは、本当に異例の事態とみてよい。
なぜ、ここまで広告費が嵩むのか。それはもちろん、商品を認知してもらい、買ってもらうためだ。だが、ここにこそ現代マーケティングの大きなゲームチェンジがある。近年では、多額のマス広告を打つことをやめた、あるいは創業当初よりやってこなかった企業が、増えてきているのである。
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