皆さんは、TVなどのマスメディアで、スターバックスのCMを見たことがあるだろうか。テスラの宣伝を見たことがあるだろうか。iPhoneはどうだろうか。通信キャリアが宣伝をしているのは、見たことがあるだろう。だが、アップルとしての広告は、言われてみれば思い出せないのではないか。広告をほとんど行わない企業は決して少なくない。Amazonも無印良品もTSUTAYAも。気がつけば、かつてはTVCMの常連であったナイキも、ほとんどマス広告を行わなくなった。
しかし、である。我々は上記に挙げた企業のことを、よくよく知っている。CMを見ていなくとも、上記企業には高いブランド価値も感じている。その背景には、私たちはもはやマス広告で製品・サービスを認知するわけではなくなっているということ、そしてまた、私たちは、広告によってではなく製品・サービスによって、企業に対する評価やイメージを固めるようになっていることがある。
私たちは、スタバの広告をほとんど見かけない。だが、私たちはショッピングモールや駅前にスタバがあるのを見て、それを認知する。そして、期待通りの定番商品から、シーズンごとの素敵な新作の魅力、店員の接客、店内の統一された雰囲気までを総合的に経験する中から、同社への好意を高めるのである。
考えてみれば、当たり前なのである。広告を打つことではなく、製品・サービスを磨くことこそが、企業活動の本質だ。企業の評価は広告によってではなく製品とサービスそのものによって決まるのが自然なこと。広告の作り出すイメージは現実の前に脆いが、実力ある製品・サービスが生み出す経験価値は、現実そのものだからだ。
広告で顧客を獲得する焼き畑農業を止めよ
本業を磨かず、広告によってのみ維持される事業は、いわば焼き畑農業のようなものである。新しい土地を見つけては焼き払い、田畑として利用し、土地がやせ細ればまた次の土地を追い求める。そうして、次の土地へ次の土地へと、場を改め続けていく。
なぜ、事業がやせ細るのかといえば、それは製品力・サービス力が弱いからだ。製品・サービスに満足しないから、顧客は取引を継続しない。放っておけば右肩下がりになる。そんな事業を維持したり、発展させようとしたりすれば、通常よりもより一層の広告費用が発生する。かくして、製品・サービスの競争力が弱いと、その分だけ広告費用がかさみ、儲かるべき事業も儲からなくなってしまうのである。売り上げに見合わない広告費用が発生するのは、とどのつまり、製品競争力が十分でないことを意味している。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら