「年の差婚が増えた」と信じる人が知らない実態 勘違いが発生してしまう3つの理由を分析

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●マイナーへの理解がカッコイイ

多様性が叫ばれる社会で、とりあえずマイナーな事柄に理解を示す風の発言がカッコイイ、という風潮が、識者といわれる人々にさえみられます。エビデンスに基づかない「年の差婚が増えた」「珍しくなくなった」という発言は、実際に増えたかどうかは問題ではなく、マイナーなことに関心が高く、多様性が重視される社会において「寛容な価値観を持つ自分の演出」といった面もあるようです。

●希望の押し付け

多様な社会において、他人がどうであれ自分の望むライフコースを実現できるのであれば、実現すればいいと思いますが、情報操作してまで実現しようという考えは問題があります。筆者が未婚少子化社会の日本の実態に関してこれまで研究してきた中で、メディアの記者、デスク、ライターなどから数多くの取材がありました。

しかし、明らかに自分(取材してくる方)の理想の成婚ケースを選んできては、それを普通である、珍しくない、と誘導するかのような発信を望んでの取材が一定数あったことは事実です。例えば「女性は所詮お金だ」と、いいたいあまりに、バブル時代に街角取材した女性の「やっぱりお金!」という発言がオンエアされた約40年前の番組の1シーンを例示し、それを裏付ける取材を申し込んできた男性がいました。

「またきたか……」という思いで、その男性に逆取材をかけたところ、やはり40代独身男性で、若い女性との結婚を望んでいる男性でした。バブル期の年収だったディレクターが羨ましい、僕もバブル期なら40代でも20代女性と結婚できたはず、と言いたかったようです。しかし、バブル期のほうが確かに男性の未婚割合が今より極端に少なかったものの、34歳までにほとんどの結婚が終了し、今以上に40代以上の男性では結婚が発生しなかった、という統計的実態を伝えると、番組作りをやめてしまったケースもありました。

年齢的な発生確率の高い時期(適齢期)

いくら進化した二足歩行の大きな脳を持つ動物といっても、人間は哺乳類として「ヒト」という一動物に過ぎません。哺乳類全般で起こるカップリングや子を授かる行為は、すべて同様に年齢的な発生確率の高い時期(適齢期)があります。特に日本はこの適齢期について、女性の結婚や出産の適齢期話になると大いなる理解を示す社会ですが、男性の結婚適齢期の話になると、なぜかどうしても受け入れられないという傾向がいまだに強く感じられます。

カップリングにおける発生確率的な限界を理解しようとしない「自滅の刃」に向き合い、自分の都合がいいように相手や社会をコントロールしようという発想を改めることも、婚活で迷走しないために身に付けておきたい思考の1つだと思います。

天野 馨南子 ニッセイ基礎研究所 人口動態シニアリサーチャー

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あまの かなこ / Kanako Amano

東京大学経済学部卒。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。1995年日本生命保険相互会社入社、99年より同社シンクタンクに出向。専門分野は人口動態に関する社会の諸問題。総務省「令和7年国勢調査有識者会議」構成員等、政府・地方自治体・法人会等の人口関連施策アドバイザーを務める。エビデンスに基づく人口問題(少子化対策・地方創生・共同参画・ライフデザイン)講演実績多数。著書に『未婚化する日本』(白秋社・監修)、『データで読み解く「生涯独身」社会』(宝島社新書)等。

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