これはこの問題に限った話ではないのですが、イメージがつきにくい問題に遭遇した場合は、簡単な例や自分にとってなじみ深い例に置き換えて考えるとうまくいくことがあります。例えば、もし選択肢が以下の2つであった場合はどうなるでしょうか。
この選択肢であれば、①を選ぶ人が多いのではないでしょうか。
「結婚している」という事象よりも、「結婚していて、子どもがいる」という事象のほうが明らかに条件が厳しいため、問題で問われている「どちらのほうが可能性が高いか」という観点であれば、①のほうが答えになることは納得がいくでしょう。
実は、最初の問いもこれとまったく同じ原理なのです。どれだけフェミニスト運動に参加している確率が高かったとしても、「銀行窓口係である」という事象よりも、「銀行窓口係であり、かつフェミニスト運動に参加している」という事象のほうが確率は小さくなるのです。
もちろん、フェミニスト運動に参加している確率が100%であった場合は、両方の確率は同じになりますが、それでも2つ目の選択肢のほうが可能性が高くなるということはありえません。
「合接の誤謬」という落とし穴
では、なぜ多くの回答者は誤った回答をしてしまうのか。ここに、「合接の誤謬(ごびゅう)」と言われる行動経済学の論理、人間の考え方の特性が関係しているのです。
どんな事象であれ、1つの事象が起こる確率と、その1つの事象を含めた2つの事象が同時に起こる確率を比較した場合、後者の確率は前者よりも低くなります。しかし、人間は特定のカテゴリーに典型的だと思われる事柄が起こる確率を過大評価する意思決定プロセスを有しています。(これを、代表性ヒューリスティックと呼びます)。
例えば今回の場合であれば、「リンダはおそらくフェミニスト運動への興味が強いだろう」というステレオタイプが、後者の確率を大きく捉えさせているのです。
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