会社上層部の「社内抗争」はなぜ起きるのか? 企業価値を毀損する人たち

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ちなみにカメラ・オーディオ、メディカル、ライフサイエンス等の分野で優れた製品を持ち、優良企業と呼ばれていたオリンパスでさえ、社内抗争の結果、株価は急落しました。背景には粉飾会計の問題もありましたが、あまりに痛い損失ではないでしょうか。

オリンパスの元社長であるウッドフォード元社長は

「経営陣以外のオリンパスの社員に罪はない」

と語っていたようです。実際そうだったとしたら、上層部の抗争で会社業績が下がるのは社員にとっては「ふざけるな」と言いたくなるところです。

社内抗争をおこす会長、社長の特徴

こうした会社内部の対立。部門同士のセクショナリズムも抗争が起きるひとつの原因ですが、

《社内抗争に終始する会長、社長の仕事ぶり》

に問題があったと思います。そもそも一般的に、会長の仕事は経済界の会合(実際にはゴルフや国内外の視察と夜の会食)といった、いわゆる、気ままな財界外交がメイン。それにも関わらず、社長以下が人事や重要な決定項目に関して「お伺い」をたてる必要がある存在。一方、社長室にこもって、役員を呼び出しては「例の件はどうなっているのだ」と事細かに指示をするだけの社長もいるようです。現場に行って、社員の声を聞く機会はなく、

会長:業績が悪くなれば社長を変えよう

社長:社長の座を失わないためならどんな手段でも使おう

現場不在で、実務をもっていないから社内抗争にエネルギー使える土壌が2人にはあったのです。ちなみに社長が現場の最前線で仕事をしているIT系企業の社長いわく、

「忙しくて、社内抗争なんてやっている時間がない。会長や副社長とは会議で喧嘩腰の討議をするけど、根に持つことはないと思うよ。正確に言えば、根に持つことに時間をかけるパワーがないともいえるかな(笑)」

との回答が返ってきました。ちなみにこの会社は会長、社長、副社長の3人が代表権をもつ会社。社長は営業部門の責任者も兼務して全国を飛び回る毎日。会長は開発部門、副社長は管理部門の責任者を兼務。すると、社内抗争は皆無。大きな問題になるような社内抗争は起きていません。

確かに、社内抗争に時間をかけられるのは、物理的に余裕があるからともいえます。仮に、この3人でも、実務から離れて、仕事が暇になったらどうか?権力闘争や縄張り争いが起きるかもしれません。さらにいえば、実務遂行する執行役員と社内ガバナンスを監視する取締役の役割を明確に線引きすればいいのかもしれなせん。ちなみにオリンパスが社内闘争で業績も落ちた時期に

「現経営陣が“業務執行役”としての立場を続ければ、会社は回るはず。やはり“取締役”は辞任すべきではないか」

と問いかけたところ、ウッドフォード氏は「まったくそのとおりだ」と答えたといいます。

やはり、事業執行者に対して、会長とか院政のような存在が口出し出来ないガバナンスの体制を徹底するべきでしょう。そして、そもそも、事業に集中して、社内抗争に関わる余裕がないくらいの仕事ぶりをしてもらいたいと思うのは私だけではないのではないでしょうか。

 

高城 幸司 株式会社セレブレイン社長

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たかぎ こうじ / Kouji Takagi

1964年10月21日、東京都生まれ。1986年同志社大学文学部卒業後、リクルートに入社。6期トップセールスに輝き、社内で創業以来歴史に残る「伝説のトップセールスマン」と呼ばれる。また、当時の活躍を書いたビジネス書は10万部を超えるベストセラーとなった。1996年には日本初の独立/起業の情報誌『アントレ』を立ち上げ、事業部長、編集長を経験。その後、株式会社セレブレイン社長に就任。その他、講演活動やラジオパーソナリティとして多くのタレント・経営者との接点を広げている。著書に『トップ営業のフレームワーク 売るための行動パターンと仕組み化・習慣化』(東洋経済新報社刊)など。

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