【産業天気図・非鉄金属】LME価格は頭打ち。快晴だった空に、わずかに雲も

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「狂乱市況」がもたらした「狂乱業績」−−。それも今上期までには終止符を打ちそうだ。業界の天気は前期が雲一つない「快晴」だとすれば、今期は上期までが「晴れ」、後半も基本的に「晴れ」が続くものの、LME(ロンドン金属取引所)市況によっては「薄曇り」となる可能性がある。
 前期の業績がいかに異常なものだったか。たとえば住友金属鉱山<5713.東証>。同社が2004年1月に発表した04~06年度までの中期3カ年計画では、最終年度となる今期の予想経常利益は350億円だった。ところが実際の経常利益は、なんと最終年度を待たずに997億円と3倍弱にも膨らんだ。中計策定時に同社が想定していた銅価格は、06年度2000ドル/トン。ところが実際の銅価格は5月に8600ドルの歴史的高値をつけた。今期会社予想経常利益は800億円。前提銅価格は4000ドルと非鉄業界の中では平均的な相場見通しだが、いずれにせよ、それでも中計策定時の2倍の水準。この狂乱市況による利益押し上げ要因は、今期も545億円に達するという。
 が、LMEの貴金属市況はすでにピークを打って軟調へと転じている。LME3カ月先物価格は6600ドルまで調整した。もっとも、この水準と比べても各社の業績の前提価格は慎重だ。同和鉱業<5714.東証>は3500ドル強、三菱マテリアル<5711.東証>4300ドル、三井金属<5706.東証>5000ドルといった具合。年度後半には投機マネーが流出し、本来の需給から見た妥当価格とされる4000ドルまで調整すると見られている。
 ただ、唯一の例外と見られているのが亜鉛価格だ。鉱石が不足し、一方で自動車用鋼板などで需要が旺盛なLME亜鉛は、足元価格3000ドル/トンと底堅い推移が続いている。「山」ビジネスから脱皮し、ハイテク電子材料へと構造改革を進めてきた非鉄業界。だが、もうしばらく、株式市場の目はメタル市況のみにクギ付けになりそうだ。
【山本隆行記者】


(株)東洋経済新報社 会社四季報速報プラス編集部

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