このメッセージを見て祐子はゾッとしていた。
婚約者のスケールは違えど、鏡の中の世界でも全く同じようなことが起きていたなんてとてもじゃないけれど信じられなかった。
こちらの世界でもどうやら美羽が開いた合コンをきっかけにその章浩という経営者の男と出会って結婚を前提に付き合っていたようだった。
章浩という男は一体、どんな人物なのだろうか?
どういう理由でこちらの世界のこの最強の美貌を纏った祐子から心が離れてしまったのだろうか?
そんな疑問が、祐子の頭の中をグルグルグルグルと支配した。
不思議と会ったこともないその章浩という経営者の男に別れを告げられた悲しみが自分の感情のように溢れ出てきた。
“何かの間違いではないか!?”
“なんで!? こんなに私は美人なのに!?
あり得ない”
何度も鏡を見ては、自分の姿を確認し、やはり美しいその姿に、
“何かの間違いではないか!?”
と祐子は何度も何度も疑った。
こちらの世界にやってきて間もない頃の鏡の中の自分に陶酔するような感覚がすっかりなくなっていることに祐子は気づいた。
しかし、その理由までは祐子は気づかなかった。
つまり、それがネガティブなものであるにせよ、ポジティブなものであるにせよ、様々な前提が「視覚」という情報を歪曲しているということに。
そして祐子は、「あの陶酔した感覚を取り戻すには“婚約者に捨てられた女”という前提をもう一度覆すしか方法がない」と、そんな思い込みにハマっていくのである。
(※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません)
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