「なんて美しいの」
「中橋様! 中橋様! 目を覚まして下さい!」
祐子は、聞き覚えのある声で目を覚ました。
意識を取り戻した祐子は、意識の足場を見つけた感覚を確認し、再び肉体を手に入れたことを実感した。
目の前には見知らぬ女性がいた。クッキリとした二重まぶたに、ぷっくらした分厚い唇に、コントラストになるような女性らしい小さな丸い小鼻。
それは、祐子の理想が詰まった美貌を持つ女性である。
「ん? 誰?」
祐子は、「まさか、これは……」と、自分の脳が発するまばたきの指示と、目の前の女性のまばたきのタイミングが同じことを何度も確認した。
「やばい! 何度やっても、自分の意思と同じタイミングで女性もまばたきをしている! これ、私だ!」
祐子の心拍数が急激に上がった。
「これが新しい私の顔……。なんて美しいの」
祐子は自分の顔ながら、自分の顔に一瞬で恋に落ちた。
「中橋様。いかがされましたか? 新しい髪型はお気に召しましたでしょうか?」
そう光太に言葉をかけられるまで、祐子はヘアスタイルが変わったことに気づいていなかった。セミロングの茶髪だった祐子の髪は少し短くカットされていてふんわりとしたミディアムヘアになっていた。もちろんその髪型は新しい祐子にとてもマッチしていた。
「はい、もちろんです。とても気に入りました。本当別人みたい」
その祐子の言葉に光太は何かを勘づいた様子で微笑んでいた。
「そうですよね。そんなに短くカットしたわけじゃないですが髪の毛が肩にかかっているのといないのとでは首周りから輪郭辺りの印象が変わりますからね」
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