4つめは「価値に見合う価格改定を行ってこなかった『値上げなし』」経営である。
賃金を上げたり、社員の休暇取得を進めたりしようとすれば、当然、企業収益を圧迫する。コスト増に対抗するためには、価格転嫁を進めなければならない。
しかし、この20年、日本企業は価格転嫁には及び腰だった。
コストに対する販売価格の比率を示す「マークアップ率」 を見ると、この20年まったく上がっていない。
コストの上昇分が消費者物価にどれだけ反映されたかを示す転嫁率を見ると、日本の製造業は72%、サービス業は29%だった。
それに対し、アメリカは製造業78%、サービス業は100%と、コスト増が価格転嫁で吸収されている。
日本は企業の大小を問わず、コスト上昇を価格に転換しようとする動きがきわめて鈍い。
デフレ期が長く続き、コストを価格に転嫁するのではなく、コストそのものを削減し、しのごうとする考え方が染みついていた。
「現場力の再生」なくして「日本の再生」はあり得ない
こうした「縮み志向の歪んだ経営」が、20年にわたり継続されてきた。
それらはすべて現場への過度な圧力として、現場を痛めつけ、消耗させ、現場力を減衰させていった。
そこには「現場力への過信」もあったかもしれない。
「うちの現場だったら、なんとかするだろう」という経営陣の甘えもあった。
しかし、その「ツケの代償」はきわめて深刻な形で表出している。
これからの日本企業は、このような経営を改善し、マイナスから立て直して、「より高次の現場力」を目指していかなければならない。
その道のりは果てしないが、「現場力の再生」なくして日本企業の再生はあり得ない。
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