2つめは「非正規社員に頼り、正社員を抑制してきた『人員増なし』」経営である。
日本企業はこれまで非正規社員を増やすことで人件費を抑制し、経営のフレキシビリティを確保してきた。
人件費を変動費化することで固定費を圧縮し、環境変化に対応しようとしてきた。その流れは、この20年を見ても変わっていない。
日本の労働者の「約4割は非正規雇用者」
日本の非正規社員数は、2005年の1634万人から2022年には2101万人と約1.3倍に増えている。日本の労働者の約4割は非正規雇用者である。
多くの企業が非正規社員から正社員へと転換する制度は整えているが、実際に正社員になりたい人のうち、転換できたのは7%程度にすぎない。
非正規社員の賃金も、ほかの先進国と比べると低い水準である。
正社員と比べた非正規社員の賃金水準は、英国やフランスなど欧州主要国は80%前後だが、日本は65%にとどまっている。
もちろん、必ずしも非正規雇用自体が悪いわけではない。働く側にとっても「自分の都合のいい時間に働きたい」「仕事を固定したくない」などのニーズがあり、それに応える働き方の選択肢のひとつだ。
しかし、現場の目線から見ると、それほど単純な話ではない。
正社員、契約社員、派遣社員、請負など多様な「身分」の人たちが同じ現場で方針やルールを徹底させたりするのは容易なことではない。さらに、外国人労働者も増加している。
「欠勤者の穴埋め」「採用に関わる負荷」「安全対策」「トラブル対応」「メンタルに問題を抱える社員のケア」「外国人労働者のケア」など、現場責任者の負担は間違いなく大きくなる。
これは、負荷を背負いきれなくなって社員が辞めてしまうという、最悪のシナリオにもつながっていく。
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