ちなみに、1人のお見合いおばさんが何百人もの会員を抱えていて、会員同士を引き合わせているわけではない。それぞれ数十人の会員を持っているおばさん同士が常に情報交換をしており、条件が釣り合いそうな男女のお見合いをセッティングするのだ。
簡単そうで難しい「条件」
健之さんによれば、プロを利用したお見合いの利点は「わかりやすくて迅速なこと」。結婚を前提としてお付き合いする相手を探している異性とすぐに会うことができて、関係を進めたいときも断りたいときもプロを介して意思表示をすればよい。親戚や上司によるお見合いとは異なり、納得がいくまで出会いを繰り返すことができる。
ただし、プロのお見合いにはデメリットもある。自分にも相手にも強制力がまったく働かないため、いつまで経っても自分が思い描く「理想の結婚相手」とは巡り合えない危険性も高まることだ。
「お見合いおばさんとの相性が大事だと思います。私がお世話になった方はとにかくたくさんの女性を紹介してくれて、私がさんざんわがままを言っても『しょうがないわね』と笑い、呆れながらも最後まで根気よく付き合ってくれました。他のお見合いおばさんと面談したこともあるのですが、『私に従いなさい!』といった言い方をされたので私には合わないと感じました」
健之さんはどのような「わがまま」を言ったのだろうか。外見と年齢だけが条件であれば、ルックスを含めた条件はピカピカの彼ならば「年下の美人」を選び放題である。しかし、健之さんは「フィーリングが合うか否か」という重要ながらも抽象的な基準を最優先とした。
「1、2回だけ食事するならば、私も社会人なのでやり過ごすことはできます。しかし、結婚とは長い時間を一緒に過ごすことでしょう。無理なことは続きません」
この慎重さは初婚の晩婚さんの特徴であるかもしれない。好みの女性ならばとりあえず結婚して、軋轢が生じたら話し合いで解決すればいい、といった勢いはないのだ。お見合いおばさんとしては「とにかく数を打つ」もしくは「巧妙かつ強引にくっつける」戦略を取るしかないだろう。健之さんのお見合いおばさんは前者を選んだ。
「さらに言わせてもらうなら、お見合いおばさん同士の相性も重要です。お見合い当日は、男性側のおばさんと女性側のおばさんも同席するのが基本で、ホテルのロビーラウンジなどで4人でしばらく話します。おばさん同士が顔見知りで仲も良いと、わけのわからない世間話がダラダラと続くのです。中身はまったくありませんが、それで場がなんとなく温まるんですよ。場合によっては、『さっさと引き上げてくれないかな。そろそろ二人きりで話したい』と思うこともありますけどね。
僕が妻と出会ったときは、お見合いのメッカとなっているホテルのラウンジが混み合っていて座れず、おばさんたちに『私たちはここで失礼するから、2人でどこかに行ってらっしゃい』と明るく言われました。それはそれで新鮮で良かったですね」
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