59万円アップル「Vision Pro」を4カ月使ってみた 本当にiPhoneやiPodのように普及するのか?

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マーク・ザッカーバーグ率いるメタは、フェイスブックやインスタグラムのような、ウェブやモバイルのSNSの「次」として、仮想空間での人同士のコミュニケーションをビジネスにしていこうとしている。

しかしながら、現段階では、ヘッドセット・VRデバイスの市場規模は、2023年時点で2136万台にとどまっており、世界中の人が日常的に扱うという前提が共有されているわけではない(出典:Statista)。

その点で言えば、Vision Proのリリースを推し進めてきたティム・クックCEOは、非常にアグレッシブに、ヘッドセット型デバイス、あるいは空間コンピューティングという市場を作りにいく「チャレンジ」をしていることがわかる。

カギは「アプリ」と活用方法

アップルは、テクノロジーのデバイス販売という一方通行のビジネスからスタートした。そのうえでデバイス購入後も、アプリストアやサブスクなどで顧客価値を向上させ、開発者とユーザーをマッチングさせるApp Storeのビジネスモデルを導入した。

アップルは、デバイスを購入するユーザーと、アプリを開発する開発者をマッチングする役割を担い、有料アプリに関して手数料を得るビジネスを行っている。

ユーザーが増えれば増えるほど、ビジネスチャンスが広がるとして開発者が喜ぶ。他方開発者が増えて良いアプリが増えれば増えるほど、デバイスの価値が高まり、ユーザーが喜ぶ。そんな相互関係がアップルのプラットフォームの上で作られている。

2024年秋にリリースされる次世代OSでは、UIの最適化と開発者向け機能強化が目立つ(筆者撮影)

iPhoneの場合は、携帯電話市場のスマートフォンへの転換という好機をつかみ、iPhoneの普及が先に起き、後から開発者コミュニティが成長した。しかしVision Proの場合、端末価格の高さや、「空間コンピューティング」という新しいチャレンジであることから、開発者コミュニティが先行することが考えられる。

簡単に言えば、「Vision Proアプリを作ると、開発者が儲かる」という状況を、アップルはいかに早く作り上げるかがカギとなるのだ。

iPhoneが登場した当初、インスタグラムやウーバーといった、今では生活に欠かせないアプリは存在しておらず、いずれもiPhone登場以降に世の中にアプリとして出てきた。では、Vision Proにとっての必需アプリとはいったい何なのか。

実はアップルも、答えを持ち合わせていないはずだ。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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