トヨタ「価格競争に突入」で懸念される先行き BYD対抗セールを実施するも厳しい中国事業

✎ 1〜 ✎ 195 ✎ 196 ✎ 197 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

大衆向けセダンで苦戦する中、トヨタは最新のHEVシステムである「第5世代THS」を搭載した小型クロスオーバーSUV、「カローラクロス」および姉妹車の「フロントランダー」を投入し、セダン販売の減少分を埋めようとしている。

カローラクロスは日本で販売されるものと基本的に同一モデル(写真:广汽トヨタ)
カローラクロスは日本で販売されるものと基本的に同一モデル(写真:广汽トヨタ)

実際、2023年のカローラの販売台数は17.6万台で、2020年比14万台減だった一方で、2022年発売したカローラクロスは14.6万台となった。また、広汽トヨタにおいては、レビンの低迷に対しフロントランダーが前年比2倍の19.7万台を販売し、好調だ。

こうした製品戦略により、トヨタは2021年以降、年間190万台を超える販売台数を記録し、中国進出以来のもっとも高い水準を維持している。

トヨタにかかる2つの懸念

しかし、2024年はトヨタにも暗雲が立ち込める。熾烈な価格競争の影響で、2024年1~5月の販売台数(レクサスを含む)は前年同期比10.3%減の63.2万台。そのうち、一汽トヨタと広汽トヨタは、それぞれ12.4%減、14.8%減となっているのだ。

NXも中国でよく売れているレクサスのSUVだ(筆者撮影)
NXも中国でよく売れているレクサスのSUVだ(筆者撮影)

系列の部品サプライヤーとディーラーの収益を維持するためには、一定規模の販売台数が必要である。そこでトヨタは、カローラクロスとフロントランダーの価格を“10万元切り”の水準まで値下げし、中国勢に対抗しようとしている。

こうした値下げ戦略は、短期的には販売台数の維持につながるだろう。しかし、トヨタには2つの懸念が潜む。

1つ目は、収益への影響だ。トヨタの中国現地法人の営業利益は、2023年度に前年度比0.5%増(1956億円)にとどまり、伸びの鈍化が見られている。

販売費の増加により、中国事業への投資損益(2689億円)は、前年度比で356億円減少。合弁メーカーの工場稼働率を見ると、広汽トヨタは2022年の113%に対して、2024年1~5月は70%へと低下しており、一汽トヨタの同80%から60%にとどまっている。

今後、高級車を含む欧米系エンジン車、地場系PHEVが中型車の値引き攻勢をかけていくとなれば、トヨタの収益に影響を与えると考えられる。

次ページリセールバリューでホンダに抜かれる
関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事