飲食店や農家が出品「SC内の直売店」にぎわう背景 「わくわく広場」のビジネスモデルに迫った
日本にやって来た戴さんは、妻の曹麗梅(ソウ・リーメイ)さんと8席の店を始める。手頃な価格で本格中華が味わえると、たちまち地元の人気店になり店を拡大、3店舗を構えた。
80~85席の各店の毎月の賃料は38万〜80万円。20人の従業員を雇用しながら、大型商業施設への出店を目標に堅実経営を心掛けてきた。
だが、そこに、新型コロナウイルス感染拡大が直撃した。全3店で月商2500万円程度あった売上高は3割減の状態が続き、初めて赤字に陥った。
店を減らすべきか、従業員をどう守っていくべきか。息子・博文さん(32)を交え連日家族会議を開いた。そんな2021年6月のある日、店に一本の電話がかかってきた。
「イオンに新しくオープンした売り場で中華弁当を販売してみませんか」
イオンショッピングセンター三好店の1階に開業した「わくわく広場」からの営業の電話だった。料理を提供できるならどんな形でも構わない。博文さんは二つ返事で応じ、翌日から早速、麻婆豆腐やチャーハン、エビチリなど店で人気のメニューを2種類の弁当にして30個を納品した。
初日は4個しか売れなかったが…
ところが、初日売れたのは4個のみ。ほとんどが廃棄になった。売り場の向かいにあるファストフード店の窓越しで1日中、客の動きを観察していた曹さんはすぐに「売れない理由」をつかんだ。
「種類が全然足りない。明日から品数を増やしてみよう」―――。ここから、盛安商会の快進撃が始まった。
初月の6月、三好店だけで5万9619円だった中華弁当の売り上げは、品数を30種類にして近隣県を含む10店舗超に納品を増やした結果、7月には140万円、9月には490万、11月には1000万円を超えた。
「わくわく」が愛知・三重・岐阜県内に次々と開業するのに合わせて納品先を広げ、2024年1月には過去最高の2402万円を売り上げた。これらはタカヨシに支払う手数料を差し引いた手取りの金額だ。
盛安商会は現在、料理人や補助スタッフ15人を含め従業員を50人に増員し、平日は毎日2500食、土日は4000食を製造している。冷蔵車10台をリースし「わくわく広場」27店舗に毎日配送する弁当事業が、店舗に並ぶ経営の大きな柱になった。
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