ウォール街に定着した「ブラック・スワン」戦略 「暴落時費用対効果」を常に得られるポジション
タレブとスピッツナーゲルは具体的な市場予測は控えつつも、世界の激変は繰り返し起き、株式市場も同様だという予測は立てている。備えていない者は必ず苦汁をなめる。
2020年3月に、投資家の苦しみはまだ始まったばかりに見えた。ところがその後、摩訶不思議なことが起きた。世界中の株式市場が上がり始めたのだ─―そして急上昇した。アメリカでは新型コロナが国中を荒らし回り、数百万人が職を失って大規模な経済破綻が進行しているさなかだというのに、株式インデックスは破竹の勢いで上昇し始め、何度も最高値記録を更新した。
ユニバーサが手にする利益が増えるだけの話
一見すると不合理な株式市場の盛り上がりにはいくつか理由があった。
スピッツナーゲルの心配の種である連邦準備制度が、何十億ドル分も社債を購入して金融システムに前代未聞の規模の流動性を注入していた。ジャンク債までが買いの対象となった。そしてアメリカ議会は資金繰りに苦しむ企業と家計に対する兆ドル規模の財政援助を開始した。
連邦準備制度と議会の共同作戦に加え、ヨーロッパなど各国でも救済策が実施されたことが、歴史的ともいえる規模のリスク行動の引き金を引いた。金利が史上最低の水準に下がって債券投資ではほとんど利益が出なかったので、血眼で利回りを求める投資家たちは唯一利益を出せる株式市場に行くしかなかったのだ。株がバブル状態になったため、デイトレーダーが1990年代後半のドットコムバブル以来の勢いで新たに波を打って押し寄せ始めた。
スピッツナーゲルにとっては、樽に火薬がさらに追加される─―そしてすべてが崩壊したときにユニバーサが手にする利益が増えるだけの話だった。
(訳:月谷真紀)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら