「クレカタッチ」は交通系ICカードを駆逐するのか 熊本で「全国相互利用」離脱、一方で逆の動きも
定期券としても使えるでんでんニモカの利用に限らず、実は「スイカの利用が多い」と市交通局の担当者は話す。他地域からの来訪者だけでなく、地元在住でもスマートフォンアプリのモバイルスイカを使っている人が多いようだという。
これに対し、市交通局のアンケート結果(2023年度)によると、タッチ決算を使ったことがある人は回答者の約19%、QRコード決済は約10%に留まる。利用したことがない人の理由は「交通系ICカードのほうが便利」が最多だ。
利用者の多い全国交通系ICカードの廃止には反対の声も上がっており、市交通局の担当者は「(廃止の)方向性は示したが決定ではなく、市民の意見などを踏まえ議論して判断する」と話す。
広島はカードからQRコードへ
更新費用の面から、ICカードを新システムに切り替える動きはほかにもある。2008年から広島県内の鉄道・バス各社で利用できた交通系ICカード「PASPY(パスピー)」は2025年春でサービスを終了し姿を消す。パスピーは地域限定のICカードだが、同カードのエリア内では全国交通系ICカードが利用可能な仕組みだ。
パスピー終了の流れをつくったのは、広島市を中心に路面電車やバスを運行する広島電鉄(広電)だ。同社と日本電気(NEC)、レシップの3社はスマートフォンの画面に表示したQRコードを利用する乗車システム「MOBIRY DAYS(モビリーデイズ)」を開発、広電とグループ会社の計4社で9月(一部は先行して7月)から導入する。
モビリーデイズは乗車データなどをクラウド上で処理し、車両に搭載した機器では高速な計算処理を行わない仕組みで、従来のICカードよりもコストダウンが図れるという。スマートフォンを持たない人向けには、同システムで使える新たなカードを用意する。
費用については非公表だが、広電の広報担当者は「ICカードシステムの更新費用がかさむことが新システム導入の狙い」と説明する。具体的に決まった内容はないというものの、割引などのサービスがICカードより設定しやすい柔軟性も導入理由の1つだ。
ただ、完全にICカードが消えるわけではなく、全国交通系ICカードも別の端末を設置して引き続き利用可能だ。また、パスピー終了に伴う新たな決済手段として、モビリーデイズではなくJR西日本のイコカに切り替える事業者も目立つ。QRコード決済の新システムがどこまで拡大するかは未知数だ。
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