「クレカタッチ」は交通系ICカードを駆逐するのか 熊本で「全国相互利用」離脱、一方で逆の動きも

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ここまで挙げた事例では、クレカタッチ決済などの新たな決済手段に押されているようにも見える交通系ICカード。だが、実際には全国交通系ICカードのエリアは広がっている。

2024年に入ってからも、これまで独自のICカードのみだった岐阜バス(岐阜県)で、3月から全国交通系ICカードが利用可能に。​伊予鉄道(愛媛県)の路面電車も同月から全国交通系ICが使えるようになった。さらに同鉄道は現行の独自カード「ICい~カード」を2025年9月に終了し、全面的にイコカに切り替える予定だ。

また、地域独自のICカードが全国共通型に「進化」するケースもある。2012年に登場し、長野市と周辺市町村のバスで利用できるICカード「KURURU(くるる)」は、2025年春からスイカの機能を備えた新たなカードに切り替わり、導入から10年以上を経て全国交通系IC対応となる。

長野 長電バス
地域独自のICカード「くるる」が使える長野の長電バス(記者撮影)

新しいくるるは、JR東日本などが開発した「地域連携ICカード」を導入する。これはスイカの機能と、地域独自のICカードが備える割引やポイント制度などの機能を1枚にまとめて搭載できるカードだ。2021年以降、JR東日本エリアで14種が発売されている。

このカードに切り替えることで高齢者割引などの独自サービスを維持できるほか、既存の機器更新ではなく「新規のシステム導入なら国庫補助があるので、費用面でもメリットがある」(長野市交通政策課)として導入が可能になったという。

やっぱり強い交通系IC

全国の交通機関に広がりつつある​クレカタッチ決済。都市部の大手私鉄や地下鉄をはじめ、地方のバス会社なども訪日客に対応したキャッシュレス決済手段として導入する事例が増えている。QRコードを利用したシステムの拡大も含め、これまで電車やバスの利用では「一強」だった交通系ICカードの立場が変化しつつあることは確かだろう。

だが、全国相互利用の利便性やスムーズなタッチ操作など、多くのユーザーが慣れ親しんだ交通系ICカードの優位性はやはり高い。一方で、経営環境が厳しさを増す地方の交通事業者にとっては、システムの更新費用が大きなネックとなる。

現状では「新たな決済手段がICカードを凌駕する」というよりは、用途によるすみ分けの状態にあるといえそうだが、一度導入した全国交通系ICの取り扱いをやめる熊本の動きは、今後の交通機関キャッシュレス決済の動向に少なからず影響を与えそうだ。

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小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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