日テレ、広告の「新型取引」でCMはどう変わるのか 広告主側が持っていた「不満」を解消できる?

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テレビCMは確かに以前より視聴率は下がった。若者は見なくなった。それは10年前との比較だ。それでもテレビ視聴量は莫大なので、インプレッション換算するとネット広告では簡単に達成できないリーチを獲得できる。前より見なくなったが、それでも若者もテレビを見ているのだ。

インプレッション取引にはもう1つ効用がある。AdRMは「地上波×インターネット統合在庫セールス」も行うと標榜している。簡単に言うと、TVerと一緒にCM枠を売ります、ということだ。TVerでは再生回数が指標の基準になるが、これはインプレッションと同じだ。テレビCMをインプレッション換算すれば、TVerと同じ広告商品として売れる。

TVerのCM枠とセット販売も可

TVerはものすごい勢いで成長している。しかもテレビ受像機での視聴がもう3割を超えた。TVerのCM枠はもはや地上波のテレビCM枠と同格と言っていい。

インプレッション取引によって、「テレビCMだけにしますか? TVerのCM枠と合わせて買いますか?」と広告主にセールスできる。そして広告主からすると、テレビCMもTVerCMもテレビ受像機で見るなら同じ効果が期待できる。

いいことばかりを書いてきたが、もちろん課題も多い。AdRMの仕組みは他局やローカル局も足並みを揃えて導入してこそ意味が出てくる。日本テレビだけができると言っても広告主は使いにくいだろう。だが導入にはある程度のシステム投資が必要だ。この厳しい状況で、もろ手を挙げて歓迎する局がどれだけいるか。まずは日本テレビが来年ローンチしてうまくいくか、様子見をするだろう。系列局の中で唯一、名古屋地区の中京テレビが導入を発表したが、現状ではまだそこまで。

ただ、私はAdRMには期待していいと考えている。先述の、いい枠が安くそうでもない枠が高い矛盾を克服すべきと思っていたからだ。

そしてもうひとつ、ネット広告がいま、大袈裟に言うと崩壊しかけている。怪しいサイトがはびこり始め、既存メディアの広告表示もモラルを逸してしまっている。テレビ局による広告表示はモラルダウンを起こしにくく、広告市場を守る役割も出てきているとも考えている。

テレビ広告は、物差しを変えればその価値を新たに示せるはずだ。

境 治 メディアコンサルタント

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さかい おさむ / Osamu Sakai

1962年福岡市生まれ。東京大学文学部卒。I&S、フリーランス、ロボット、ビデオプロモーションなどを経て、2013年から再びフリーランス。エム・データ顧問研究員。有料マガジン「MediaBorder」発行人。著書に『拡張するテレビ』(宣伝会議)、『爆発的ヒットは“想い”から生まれる』(大和書房)など。

X(旧Twitter):@sakaiosamu

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