「現場力なんてもうありませんよ……」
ある大手部品メーカーの主力工場を訪ねた際、50代のベテラン班長から発せられた言葉に私は絶句した。
昼間に行われた意見交換会には、製造現場の課長や班長クラス約20人が集まった。重苦しい空気が会議室を支配し、たいした話は出なかった。しかし、意見交換会終了後、リーダークラスの班長4人と居酒屋で一杯やっているうちに、お酒の力を借りてか本音が出はじめた。
「人が増えても派遣社員ばかり。その面倒を見るので手一杯」
「自分の後継者を育てなきゃと思うが、久しぶりに配属された若手の正社員は1年足らずで辞めた」
「本社から指示される管理項目がやたらと増えて、提出する書類作成で忙殺される。部下とのコミュニケーションの時間さえとれない」
「こんなに忙しいのに赤字は続いている。給与も上がらないし、惰性でやっているだけ」
「こんな状況で現場力なんて高まるはずもない。先行きは真っ暗」
激変する環境の中で、彼らはもがき、必死に戦ってきた。しかし、いまではその気力すら失っている。
「活力」「熱気」が完全に失われ「無気力」「無関心」が蔓延
こうした現場の声、本音は多くの企業の現場でもよく聞くようになった。
「何を言っても無駄。会社には何も期待していない」
「余計なことはせず、言われたことだけおとなしくしていればいい」
「上が何を考えているのかわからないし、興味もない」
わかりやすく言えば、現場からエネルギーをまったく感じないのだ。「活力」や「熱気」が完全に失われ、無気力、無関心が蔓延している。現場の人たちが「熱いもの」を持って働いていないのだ。これが1つめの理由である。
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