「セブン-イレブン」が絶好調なセブン&アイ・ホールディングスであっても「イトーヨーカ堂」の未来図を描けているわけではない。ユニーも同様だ。そこでダイエーが再注目したのが、食品スーパーとしての自らの強みだった。幸い、中内さん路線を採っていたとき、都市部でかつ利便性の高いところに土地を有している。イオンにとっても、都市部の競争力強化に寄与できる。「負の遺産」の土地も、厳選すれば立派な遺産になりうる。
ダイエーは食品マーチャンダイジング機能(食品仕入れ)に一定の評価を得ている。イオンの完全子会社になった後、まだ日用品カテゴリは苦境から脱しきれていないが、ダイエーが食品に特化している効果が業績面にジワジワと出てきた。
総合型から食品訴求のスーパーへ
ダイエーは2015年4月から「肉パ!」なる催しを開始した。これは食肉ラインナップを広げたものだ。これからいくつかの店舗で食肉売り場を拡充しながら、主婦層のみならずバーベキューやパーティー需要をつかもうとしている。現在は牛肉市況が活発で、市場価格は値上がりを続けている。単なる安売りでは採算が取れない。価値を消費者から認めてもらい、客単価アップが急務だ。
ダイエーは、シニアにも優しい店舗づくりも進めている。シニア層も取り込もうとするネット通販では、とくに重い商品を運んでくれる利便性がある。ダイエーが採ったのが、試験的にいくつかの店舗で配送サービスの時間帯を延ばすことだ。
従来、ダイエーは当日配達サービス『クイック配達』を展開していたが、新サービスでは配達所要時間も短縮され約半分。その新サービス名が『アッシーくん』というのは、バブル期を彷彿とさせる。バブル崩壊から苦境に陥ったダイエーを思うに、このサービス名は自虐のブラックジョークではないことを祈る。2015年6月末より成増店を皮切りに新サービス導入を拡大していく。
そしてイオンの完全子会社となった後のダイエーが、復活の切り札としたのが、食品特化の「フードスタイルストア」だ。これは良質な生鮮食料品類を販売し、海外産の商品も含め、幅広く女性層の取り込みを意図した新業態だ。たとえばGMSからフードスタイルストアへリニューアルした赤羽店では、食品面積を広げるいっぽうで、日用品類は縮小させている。
そして、「安く!そして安く!」といった中内さん一流の手法とも決別し、乗り遅れていた付加価値食品の販売強化も進めることになった。ダイエーは、ここからなんとか若い層の女性需要を獲得しようとしている。今後はイートインコーナーも充実させ、コーヒーを出しドーナツも揚げて提供する。くしくもダイエーが三菱商事に売却したローソンが、高級スーパーの成城石井を買収したのは皮肉ともいえる。
かつてプライベートブランド(PB)を開発し、国と闘い規制を撤廃させ、出店ルールそのものすら変えさせた革命家・中内功。彼の良き功績はいまなお、評価されてしかるべきだろう。しかし、革命を起こした後も、革命は常に起こし続けなければならない。いま大成功を収めているビジネスモデルも改革を怠れば、やがて色褪せ衰退する。ダイエーと中内功さんから私たちが得られる教訓はきっと、そういうことだ。
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