侵略へ感度なき日本、平和への防衛負担を公平に 太平洋戦争の地上戦から見る戦争の教訓(後編)

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台湾有事に沖縄が巻き込まれるという議論は、アメリカ軍による台湾救援を阻止するため、中国軍が台湾に近い沖縄を攻撃するという想定からきている。だが専門家の指摘によれば、在日米軍を足止めするのであれば、司令部のある横田基地(東京都)を中心に全国の在日米軍基地が同時に標的となる。

特に在沖海兵隊と連携するアメリカ海軍の拠点である、横須賀(神奈川県)と佐世保(長崎県)が狙われると考えるべきだ。沖縄だけが攻撃されるという発想は、政策決定者に都合のいいバイアスがかかっている。

侵略に対する感度が欠如した日本

逆に、平和運動関係者やリベラル系メディアから「台湾有事に巻き込まれないために、日米の軍事介入を阻止すべき」「台湾は中国の一部だという中国の主張を認めるべき」という議論が出ることがある。その根底にある、台湾および周辺海峡だけが戦場になれば、沖縄は被害を受けない、という考えも楽観的といわざるをえない。

専門家の間では、米中両国とも全面衝突を避けたがっており、中国は長期間の台湾海峡封鎖によって台湾に圧力をかける可能性の方が高いと指摘する声が強い。そうなれば、台湾海峡に設置された機雷が沖縄近海に漂流し、自給率の低い島嶼の住民の命綱である貨物船の航行が不可能となる。

また、自衛隊関係者は中国軍が台湾攻略作戦の拠点として、与那国島や石垣島を占領するシミュレーションを行っている。その場合、中距離弾道ミサイルで自衛隊施設・部隊を機能停止させた後、部隊が上陸する。

近年の中国軍のミサイルはピンポイント攻撃の命中率が高く、住民への被害は最小限におさえられると主張する専門家もいる。しかし、ロシアのウクライナ侵略を見るかぎり、中国軍に民間人の犠牲者を出さないというインセンティブが働くかは疑わしい。このように、日米両国が台湾有事に介入しなければ沖縄が巻き込まれないという可能性はかなり低い。

ここで、両大戦におけるベルギーの歴史を見てみたい。同国は第1次世界大戦時、中立を宣言したが、ベルギーを通過してフランスに侵攻する作戦を立てたドイツ軍の侵略を受けた。ベルギー政府はフランスに戦時政権を樹立し、国内にとどまったベルギー国王は軍を率いてドイツ軍と4年間戦い続ける。住民もドイツ軍の占領に抵抗し、1万4000人弱の死者を出した。ドイツによって、国外移住と強制労働をさせられたベルギー国民は約70万人にのぼる。

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